「ゴーゴーカレー」が居酒屋で提供される事情 「プチFC」はコロナ禍飲食店の救世主となるか

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しかし、ラーメンは命ともいえるスープをとらねばならない。レシピを教わっただけではラーメン店での勤務経験があったとしても同じ味ができるとは限らない。未経験者ならなおさらだ。素人目からすると、かなりハードルが高いように思える。

「まずは、面接を行って加盟契約した後、店で出すメニューを決めます。味がブレないように、味噌や脂などの調味料を合わせるだけで完成するスープを開発しました。そのスープと麺、味噌、チャーシューがセットになった“派出所キット”を用意しています。実は海外の店舗も同じシステムを採用しています。海外出店の経験があったからこそ、派出所のシステムが生まれたのです」(堀内さん)

初期費用は通常のFC店の30分の1

既存のFC店と差別化するため、派出所店は「東京豚骨ラーメン ばんから」から派生した別ブランドの「旭川味噌ラーメン ばんから」の看板を掲げている。前出の「小○商店」は、今年1月に「旭川味噌ラーメン ばんから 名古屋派出所」としてランチタイムの11時〜15時まで営業している。

名古屋駅前という場所柄、店の周辺には数多くのラーメン店が軒を連ねているものの、味噌ラーメンに特化した店はほとんどない。特筆すべきは味とボリューム。

「東京豚骨ラーメン ばんから」代表の草野直樹氏が旭川に通い詰めて6年の歳月をかけて完成させた濃厚な味噌がベース。スープはほのかに甘みがあり、小麦が香る味噌ラーメン専用の太麺とよく合う。

特製の甘ダレで味付けした豚バラ肉をたっぷりとのせた看板メニュー「ぶたみそ」をはじめ、定番の「味噌ラーメン」もたっぷりのモヤシと分厚いチャーシュー、メンマ、海苔、ネギがのる。どれも食べごたえがあり、類似するラーメンを名古屋ではあまり見たことがない。

看板メニューの「ぶたみそ」は食べごたえ十分(写真:花研)

「現在の外出自粛の影響がある中でも、1日20〜30食くらいは出ますね。客単価が約1000円で、日曜が休みですので25日間として売り上げはだいたい50万円〜60万円です。何よりも、スープの調理と麺を茹でる鍋とコンロが2つあればできるのと、ほとんどロスが出ないことが気に入っています」(小川さん)

気になるのは費用である。まず、既存店舗のスキマ時間を使うので、内装や厨房設備、看板などの初期工事費用(FC店の場合1200万円)と保証金や仲介料など物件取得費用(FC店の場合240万円)は一切かからない。

初期費用は、丼やのぼり、店頭バナー、茹でザルなどの初期ソフト費用15万円(FC店の場合75万円)と加盟金50万円(FCの場合300万円)の計65万円。FC店と比べると30分の1の金額で開業できる。

「加盟金も研修費などで消えてしまうので、利益は派出所キットの売り上げのみになります。もともと飲食店を元気にしたいという気持ちで始めたことですので仕方がありません」と、堀内さんは語るが、これまでFC展開していなかった場所に看板を掲げ、知名度を高めるという効果もある。

「プチFC」の利点は、何よりも初期投資が低額であることに尽きる。これからさまざまな外食チェーンが参入するのではないだろうか。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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