世界の4割が受注「中国の造船業」に見る不安 造船大手の「CSSC」は1600億円超の受注を獲得

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中国国有の造船最大手のCSSCは契約総額1600億円を超える超大型コンテナ船13隻の建造を受注をしたことを明らかにした(写真は同社ウェブサイトより)

中国国有の造船最大手、中国船舶集団(CSSC)は4月1日、超大型コンテナ船13隻の建造を受注したことを明らかにした。契約総額は100億元(約1684億円)を超える。同契約は3月31日に調印、2023年から2024年の間に納入する予定だ。これは、中国の造船業がこれまでに受注したコンテナ船建造の1契約としては、最大規模になる。

【2021年4月21日14時追記】初出時の表記を一部修正いたします。

本件の内情に詳しい専門家によると、具体的な契約総額は約106億元(約1785億円)で、中国船舶集団傘下の大連船舶重工集団と広州広船国際の2社がコンソーシアムで引き受けるという。両社とも総積載量が約1万6000TEU(20フィートコンテナ換算)にも上る、大型コンテナ船を建造する予定だ。なお、発注者はスイスに本社を構えるコンテナ船世界2位のメディテラニアン・シッピング・カンパニー(MSC)とされている。

中国船舶集団による直近の受注は、実はこれだけではない。この契約に調印する直前の3月30日、同社は1万5500TEU級の大型コンテナ船6隻の受注を獲得したばかりだった。発注者はコンテナ船の独立系船主で世界最大のシースパン(Seaspan Corporation)。契約総額は50億元(約842億円)に上る。この契約も2023年後半から2024年中頃の納付を予定しているという。

コンテナ船輸送は需要が供給を上回る

相次ぐ受注の背景には、昨年来、世界の海上輸送ビジネスの繁忙期が続いていることがある。とくにコロナ禍の影響で中国からの輸出に代表される太平洋航路のコンテナ船輸送の需要が増え続け、供給を上回っている状態だ。そのため船舶輸送コスト(傭船料)も暴騰が続き、海運会社と船主は、次々と新船建造に動いている(詳しくは、「世界の大手船主『コンテナ船』新造発注続ける訳」を参照)。2021年に入ると、わずか2カ月の間で全世界で交わされたコンテナ船建造契約と意向書の件数は、2019年通期の契約件数に比べて1.5倍となった。

本記事は「財新」の提供記事です

中国の建造・受注状況はより逼迫している。業界団体である中国船舶工業行業協会が3月24日に発表したデータによれば、2021年1~2月に中国で建造(竣工)した船舶は723万DWT(載貨重量トン)に達し、前年同期比1.55倍となった。また、新規受注の船舶は前年同期比2.05倍の681万DWTに上った。この新規受注数は世界全体の44.7%に相当する。

船舶業界の関係者によると、今回造船各社に押し寄せている注文の波は、コンテナ船に集中しているという。中国で大型コンテナ船の建造が可能な造船会社はすでに注文が飽和してしまい、ドックの確保も難しく、今後コンテナ船は大幅値上げとなる可能性もある。

(財新記者:包志明)
※原文の配信は4月3日

財新 Biz&Tech

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