中国のテレビ大手のTCL科技集団(TCL)が、ディスプレーパネル事業への投資拡大を続けている。同社は4月9日夜、第三者割当増資で最大120億元(約2004億円)を調達し、広東省広州市で進めている第8.6世代パネルの製造プロジェクトなどに投資する計画を発表した。
子会社のパネルメーカーであるTCL華星光電技術(CSOT)が、広州市政府および広州経済技術開発区管理委員会の支援を得て、画素を駆動するトランジスタに酸化物半導体を用いた第8.6世代パネルの生産ラインを建設する。生産能力は月産18万枚を見込んでいる。
このプロジェクトの総投資額は350億元(約5845億円)。2021年9月までに着工し、24カ月以内の稼働を目指す。ノートパソコンなどIT機器向けの中型パネルを中心に生産するほか、自動車、医療、工業制御機器、航空など専門用途向けのパネルも生産する予定だ。
TCLは同時に、第8.5世代のフレキシブル有機ELパネルの生産ライン建設計画も明らかにした。これは中国初の「印刷方式」による有機ELパネルの量産を目指すもので、生産能力は月産6万枚。ただし、プロジェクトの始動は技術面の検証が完了した後になる。
テレビ用パネルではすでに世界第2位
2009年に設立されたCSOT は、これまでに6本のパネル生産ラインを建設。2020年8月には韓国サムスン電子傘下のサムスンディスプレイの江蘇省蘇州市の第8.5世代のパネル生産子会社を買収するなど、生産能力の拡大に邁進してきた。
しかし現在の主力製品はテレビ用の大型パネルで、IT機器向けの中型パネルでは競合他社の後塵を拝していた。TCLの開示情報によれば、テレビ用パネルの市場でCSOT のシェアは世界第2位であり、特に55インチパネルでは首位に立つ。一方、証券会社のレポートによれば、IT機器向けの中型パネルではCSOTの市場シェアは1%にすぎない。
そんななか、昨年は新型コロナウイルスの世界的流行を背景にリモートワークやオンライン授業のニーズが高まり、IT機器の需要が爆発的に拡大した。中国の調査会社の集邦諮詢(トレンドフォース)によれば、2020年の全世界のノートパソコン出荷台数は前年比2割以上増加し、初めて2億台を突破した。
TCLとしては、このチャンスに対して指をくわえて見ているわけにはいかない。前出の証券会社のレポートは、第8.6世代のパネル生産ラインが本格稼働した暁にはCSOTはノートパソコン用パネル市場で24%のシェアを獲得し、世界第2位に浮上する可能性があると分析している。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は4月9日
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