中国の家電大手のTCL科技集団(TCL)は8月28日、韓国サムスン電子傘下のサムスンディスプレイが江蘇省蘇州市に持つ液晶パネル生産子会社を総額10億8000万ドル(約1143億円)で買収すると発表した。サムスンディスプレイは2020年末までにテレビ向け大型液晶パネルの生産から撤退する方針で、今回の子会社譲渡はその一環とみられる。
具体的にはTCL傘下のパネルメーカーのTCL華星光電技術(CSOT)が、サムスンディスプレイの現地子会社である蘇州三星電子液晶顕示科技(SSL)の株式の60%を7億3900万ドル(約782億円)で、同じく蘇州三星電子液晶顕示器(SSM)の株式の100%を3億4100万ドル(約361億円)で買い取る。
と同時に、サムスンディスプレイはSSLの売却額と同額の7億3900万ドルをCSOTに出資する。これにより、サムスンディスプレイはCSOTの株式の12.33%を保有する第2位株主となり、CSOTの取締役会に議決権を持たないオブザーバー1名を派遣する。取引の完了は2021年を予定している。
供給過剰の緩和や産業集約化の狙いも
TCLの説明によれば、テレビ向け大型パネルはユーザーの需要が安定的に成長する一方、メーカー側では(供給過剰となっている)経営資源の再配置を進めてきた。今回の買収を通じてCSOTの規模のメリットと製品ラインナップの最適化を追求するとともに、パネル業界全体の需給改善と産業集約化にも貢献できるという。
買収が完了すると、CSOTが持つ大型液晶パネルの生産ラインはフル稼働が可能な第8.5世代ラインが3本、同じく第11世代ラインが1本となり、生産能力はガラス基板基準で前者が月産44万枚、後者が同9万枚に達する。CSOTはさらに第11世代ラインをもう1本増設中だ。
中国電子映像産業協会の副秘書長を務める董敏氏は、TCLの決断について「サムスンディスプレイの蘇州のパネル工場は生産技術が成熟しており、歩留まりが高く、買収に値する」と評価した。
董氏はまた、買収完了後のCSOTは市場シェアの増加によって業界内での影響力を高め、同じ中国の競合企業である京東方科技集団(BOE)の脅威になりうるとの見方を示した。市場調査会社の群智諮詢によれば、BOEのテレビ向け液晶パネル出荷枚数は2020年1~6月期は2300万枚と世界首位の座を守り、CSOTは同2030万枚で第2位につけている。
(財新記者:屈慧)
※原文の配信は8月29日
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