中国の新興パネルメーカーの柔宇科技(ロヨル)は2月9日、上海証券取引所に提出していたハイテク企業向け新市場「科創板」への上場申請を取り下げた。翌2月10日の上海証券取引所の情報開示で明らかになった。
柔宇科技は折り曲げられる「フレキシブルディスプレー」の開発・製造で知られるハイテク・スタートアップだ。同社の説明によれば、株主の中に(上場審査基準に抵触する)適格性の問題が存在する可能性があり、会社の将来の発展計画を考慮して上場準備の一時延期を決めたという。
同社がIPO(新規株式公開)の目論見書を提出したのは2020年12月31日。科創板への上場により144億元(約2341億円)を調達する計画だった。ところが1カ月後の2021年1月31日、中国証券監督管理委員会がIPOを申請中の企業の中から19社の抜き取り調査を発表し、そのリストに柔宇科技の社名が含まれていた。
「抜き取り調査のリストに指定されると、IPOの事前審査への合格は難しくなる。証券監督管理委員会が調査官を現場に派遣し、非常に厳しく調べるからだ」。未公開株の取引に詳しい市場関係者は、そう解説する。
投資家への説得力が欠如
柔宇科技は独自技術が高い注目を集めると同時に、その評価が大きく分かれてきた企業である。
フレキシブルディスプレーには、一度曲げた後は動かせない固定曲面型と、何度でも曲げ伸ばしできるフルフレキシブル型の2種類がある。韓国のサムスン電子やLGディスプレー、中国の京東方科技集団(BOE)などの大手パネルメーカーは、すでに量産している固定曲面型の技術をベースに、フルフレキシブル型の開発を進めてきた。
ところが、柔宇科技は固定曲面型を飛ばして直接フルフレキシブル型に参入した。独自に開発した非主流の技術を用いることで、フルフレキシブル型のコストを低減し歩留まりを向上。先発の大手を追い抜いたと、同社は自称している。
しかしパネル業界や投資業界からは、柔宇科技の技術力を疑問視する声が後を絶たない。同社は社外との技術交流がほとんどなく、客観的かつ専門的な評価を下すことができないためだ。
今回の上場申請取り下げも、技術の先進性が不透明で投資家への説得力が欠如していたことが主因だった可能性が高い。
つまるところ、柔宇科技はIPOを通じて計画どおりの資金を調達するメドが立たなかったのだ。目論見書によれば、同社の2020年1~6月期の純損益は9億6000万元(約156億円)の赤字であり、今後も赤字が続く見通しだ。
(財新記者:何書静)
※原文の配信は2月10日
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