政策決定を官僚がした証拠は、これまで何もない--『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』を書いた村松岐夫氏(京都大学名誉教授)に聞く
政権交代で、政策執行において政務三役が前面に出るなど、政治家と官僚の関係も大きく変わったように見える。ところが、この本は10年ごと3回の「定点調査」に基づき、すでに関係の変化は1990年代末には決定的となり、むしろ民主党政権は10年越しの変化を受け継いでいるにすぎないという。
--もともと政策において官僚優位などなかった?
学者が書いたものでも官僚優位という雰囲気をぷんぷんと感じさせる本はある。しかし、政策決定を官僚がやったという証拠はこれまで何もない。それを多くの人は承知している。同時に、政党優位論を真正面から言う人もいない。
また、政権党が変わったので、こんなに変わった、これまでは官僚が主体だったからではないか、という言い方をする人もいる。しかし、とりわけ民主党に知恵があっただけで、暴力革命を起こしたわけでもない。いわば「おまえら嫌いだ、黙っておれ」と言うだけで黙った。自民党もその気があれば、官僚にものを言わせない、政策の準備もするなと言えた。ただ自民党の場合は権限を委任してやらせるほうがいいとして、自らは選挙に専念するほうを選んだ。
だから、政治家がやる気になればいつでもやれたし、そうでなく別のことを選んだから、見方によっては、官僚が政策で主導しているように見えたということではないか。
--官僚が政策決定をしたことはない?
はるか以前、経済復興のときは傾斜生産とかで、官僚の役割はすごく重要だった。しかし、60年代終わりになると、もうない。経済はマーケットの中で民間が大きくしていった。自民党は官僚をうまく使った。自民党にとっては、復興にかける同じ思いがあったし、官僚には政策能力があるから任せればいい。それは結局、戦後の政治の安定をもたらし、経済成長をもたらした。この点で、たいへんな功労者だと思う。