政策決定を官僚がした証拠は、これまで何もない--『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』を書いた村松岐夫氏(京都大学名誉教授)に聞く


 実際、高度成長といって、人心が騒いでいるのを同一方向に向かわせるとか、日本列島改造といって再分配構造をつくるとか、密約を結んで沖縄返還を実現するとか、すべて大蔵省がやったことでもないし、通商産業省がやったことでもない。政治の舵取りは政治家がやっていた。

日本には、政治家に対する過剰期待がある一方、官僚への過大評価が他方にある。ともに官僚優位、政党優位はなかったというのが、30年来の私の主張。その状態でずっと同じように来て、80年代末からの10年間にそこでのルール・規範はまた変わった。

--本のタイトルにある「政官スクラム型」とは。

どこの国でも政治家と官僚は互いに違和感を持つものだ。それはバックグラウンドが違うし、目的が違うし、さらに選ばれ方が違うからだ。しかし、日本の場合には、自民党が政策の準備作業の多くを官僚に預けたから、飛び抜けていい協力関係になった。その政治の提携関係を「政官スクラム」と表現して、ちょっと過剰な協力関係だったというニュアンスを入れた。

--その政官スクラムの「98年崩壊説」を唱えています。

崩壊の前兆は89年に始まった。ベルリンの壁が崩れて、自民党にとって共産主義批判が重要ではなくなった。自民党の正当化をイデオロギーではできなくなる。反共で地元に浸透し、安定した秩序をつくることができなくなり、一枚岩のタガが外れ、自民党は割れる。細川護煕元首相は自民党的でなかったかもしれないが、いくつも政党ができてしまう。

次の転機は94年。自民党が一時下野し、このとき、従来確保していた「絆」の3分の1が切れた可能性がある。そして、とりわけ大蔵省に注目しているが、不良債権問題が政治的な焦点になってくる。もともと政治家と官僚の関係と言ったときの官僚とはほぼ大蔵省のことだが、ここで大蔵省が自民党から疎まれるようになる。地価バブル、株価バブルも自民党内で大蔵省のネットワークが強かったから動きが取れない。官僚バッシングが始まる。

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