同病院での新型コロナのクラスターの発生もあり、行政による入院患者と家族に対する転院・退院の意向確認はまだ行われていない。神戸市は精神保健福祉士など専門家に依頼するとしている。「当協会としては協力する方向で検討しており、詳細は市と協議中だ。ただ、受け入れ先が決まらない中で意向を聞いても、患者の不安は募るばかり。神戸市はほかにも病院団体を中心に多くの関係者への協力を得る必要があるだろう。われわれも関係団体とともに取り組んでいきたいと考えている」(兵庫県精神保健福祉士協会の北岡祐子会長)。
第三者委員会も市が手をこまぬいているうちに、病院を運営する医療法人財団「兵庫錦秀(きんしゅう)会」が独自に、外部の有識者を交えた「危機管理委員会」を設置。市のオブザーバー参加こそ認められたが、当初に市が想定していた、厳しい意見を述べた専門分科会の委員を送り込む構想は実現しなかった。神戸市は出し抜かれたような格好だ。
神出病院の籔本雅巳理事長は、関西を拠点にベッド数約6000床を擁する大手医療グループ「錦秀会グループ」の最高経営責任者(CEO)だ。籔本CEOは安倍晋三前首相に近く、ゴルフや会食をともにするなど、当時の新聞の「首相動静」欄にもたびたび登場している。
現在グループホームページでは事件に触れず
籔本CEOを知る錦秀会グループの元職員によれば、「経営会議ではいかに収益を上げるかが話し合われており、その方法として入退院を組み合わせて、1つのベッドを1日3回使うという話があった。営利体質は徹底している。実際、錦秀会の職員は入院、転院希望の患者を探して各種施設に営業に回っている」という。
現在、錦秀会グループのホームページでは、神出病院事件についてはいっさい触れられていない。
そうした中、神出病院は3月1日、大澤氏に代わり、福井裕行氏が新院長に就任した。そこで元職員の有罪判決、裁判内で明らかになった事実や神戸市の改善命令の受け止め、病院再建に向けた今後の取り組みについて、籔本CEO、福井新院長に取材を申し込んだところ、「今は総括している段階なので、今回は理事長も院長も取材には応じられない」との回答だった。
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