神戸・神出病院、凄惨な虐待事件から見えた難題 患者をなぶりまくる精神病院の驚くべき実態

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高い石壁に囲まれ要塞のような外観の神出病院。訪問者をサーチライトが照らし出す(記者撮影)
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精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第12回。

神戸市の中心街から、電車とバスを乗り継いでおよそ1時間半。さらに最寄りのバス停から約1キロメートル歩くと、見渡す限りの田園風景の中に異質な、要塞のような巨大な建物が眼前に現れる。

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465床の入院施設を持つ大型精神科病院「神出(かんで)病院」(神戸市西区)だ。

正門回りの高い石壁には「関係者以外立入禁止」の札が掲げられ、サーチライトのついた監視カメラが訪問者に向けられる。開閉式の鉄門の上部には槍のようなオブジェが付されており、また広大な病院敷地を取り囲むフェンスにも、一部に鉄条網が張られていた。

神出病院の籔本雅巳理事長は、関西拠点の大手医療グループ「錦秀会グループ」の最高経営責任者だ。病院敷地を取り囲むフェンスの一部には鉄条網も(記者撮影)

正門前に隣接する売店には、複数の看護師に引率された5~6人の中高年の男性入院患者が、まるで隊列を組んで行進するかのように訪れ、手早く買い物を済ませると、また行進して院内へと消えていった。近隣の住民や医療関係者によれば、病院と地域との交流は乏しいという。

おぞましい虐待の実態

2020年3月、この病院を舞台とした看護師らによる患者の集団虐待暴行事件が発覚した。2018年から2019年にかけて、看護師、看護助手の計6人が、重度の統合失調症や認知症の人が入院する「B棟4階」の患者7人に対して、10件の虐待行為をしたとして、準強制わいせつ、暴行、監禁などの疑いで兵庫県警に逮捕された。

男性患者同士でキスをさせる、男性患者の陰部にジャムを塗ってそれをほかの男性患者になめさせる、患者を全裸にして水をかける、落下防止柵付きのベッドを逆さにして患者にかぶせて監禁するなど、おぞましい虐待の実態が明らかとなった。こうした行為を1年以上にわたって繰り返し、撮影した動画をLINE(ライン)で共有し面白がっていたという。

たまたま加害者の1人が病院とは無関係の事件で県警に逮捕され、彼のスマートフォンから上記のような行為を映した動画が多数見つかったことで、同院での大規模な虐待行為が発覚し6人の逮捕へとつながった。病院内からの内部告発などによる発覚ではなかった。6人とも容疑を認め、3人が執行猶予付きの有罪判決を、3人が実刑判決を受け、その後、刑は確定している。

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