SNSを通じた「情報商材トラブル」が急増のワケ クーリングオフがなくても諦める必要はない

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クーリングオフという言葉を耳にしたことのある読者も多いと思うが、クーリングオフとは、いったん契約の申し込みをしたり契約を結んだりした場合でも、契約を再考できるように、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり契約を解除したりできる制度であり、消費者にとって強い味方だ(返品費用は販売業者の負担となる)。

しかし、訪問販売および電話勧誘販売では、法律で決められた書類を受け取ってから8日間クーリングオフの適用があるが、通信販売ではクーリングオフの適用がないという違いがある。

では、通信販売の場合は一度申し込みや契約をしてしまったらあきらめるしかないのかというと、そうとは限らない。広告や最終申込画面で契約の申し込みの撤回/契約の解除の条件(例:使用していない商品であること、商品到着後14日以内など)や返品の送料負担に関する特約を表示している販売業者もあり、その場合は特約に従うことになる。だが、特約を表示していない場合には、商品を受け取った日を含めて8日以内に販売業者に通知(メール、手紙、電話、メッセンジャーなど)が届くことで契約の申し込みの撤回/契約の解除をすることができる。ただしクーリングオフと違い、契約解除後の返品費用は買った側の負担となる。

通信販売で商品を受け取ってから9日以上経過してしまったなど、特定商取引法に基づく解除ができない場合でも、消費者契約法等のほかの法律に基づき契約の取り消しまたは解除ができるケースもありうるので、すでに契約をしてしまい上記の条件を満たさない場合でも、近くの消費者生活センターや消費者被害事件を多く扱っている弁護士等の専門家に相談してほしい。

契約して後悔しないために

上記の通り、情報商材について売買の申し込みや売買契約をした場合でも、取るべき方策はある。しかし、販売業者と途中から連絡が取れなくなったり、売買代金の振込先口座が解約されてしまったりすると、支払ったお金を取り戻すことは非常に難しくなる。少しでも怪しいと思ったら、契約をしない、連絡をしないことが重要だ。

情報商材は、契約をする前には、どんな中身なのかを確かめることができない。しかし、普段自分が買い物をするときのことを考えてみてほしい。コンビニ、スーパー、百貨店、ネットショッピングで、中身がまったくわからない商品を買っているだろうか。

情報商材は、現状を劇的に変化させてくれる魔法などではない。本当に確実に楽に儲かる方法があるのであれば、それはすでに広まっているはずであり、その結果その方法では儲からなくなっているはずである。

宮川 舞 銀座数寄屋通り法律事務所 弁護士

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みやがわ まい / Mai Miyagawa

東京弁護士会所属。会社間の紛争を中心に、訴訟を多く手掛ける。また、『名誉毀損の慰謝料算定』(学陽書房)の執筆陣に名を連ねるなど、名誉・信用・プライバシー・肖像・パブリシティの侵害に関わる研究や事案に造詣が深い。弁護士による誹謗中傷対策 弁護士宮川舞公式サイト

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