糖尿病なのに「糖質制限に挑戦した男」の大失敗 最悪の場合「心筋梗塞」「脳梗塞」に陥るリスクも
ダイエットといえば、近年よく耳にするのが「糖質制限」や「低糖質」「低炭水化物」といったワードです。いまやダイエットの定番になりつつあるようです。
糖質とは体のエネルギー源となる炭水化物から食物繊維を除いたもので、米や小麦粉、砂糖などが代表で、体内に入るとブドウ糖になります。
ダイエットの面で見ると、通常、血液中のブドウ糖は筋肉などに取り込まれ、エネルギー源になりますが、取り込むことができなかった余剰のブドウ糖は中性脂肪に変えて、脂肪細胞にため込もうとします。
糖質制限をすると、余剰のブドウ糖が減少して糖が脂肪にため込まれなくなります。また足りないエネルギー源を補うために、肝臓で脂肪を分解してケトン体が作られるため、体脂肪燃焼によるダイエット効果が期待できる、というわけです。
もちろん、糖そのものの摂取を抑えているので、血糖値の上昇を防ぐこともできるため、血糖値が気になる人や糖尿病患者さんの中には、積極的に糖質制限をする人もいます。
血糖値を上げるのは主に糖ですので、短期的には糖質制限によって確実に血糖値は下がります。
「糖質制限をやめたあとの反動」はまだ未知数
しかし、それでも私は、糖尿病、または予備群の人たちに糖質制限を積極的にはおすすめしていません。
それはなぜか?
まずは、日本糖尿病学会も見解を出していますが、長期間、糖質制限をしたときに、体への影響に対するエビデンス(科学的根拠)が確立されていないことです。
糖質ダイエットが話題になってまだ10〜20年ほどでしょう。生命維持に欠かせない三大栄養素の一つである糖質を極端に制限した食生活を長期間続けた場合、体にどんな影響が出るか、あるいは糖質制限をやめたあとの反動がどうなるのか、基本的な問題が解決できていないのです。
また、どれくらい糖質をカットし、たんぱく質や脂質の摂取量や割合はどれくらいにするといいのか、エビデンスに基づいたノウハウがありません。個々人が自分の感覚や経験則で行っているケースが多いのが実態でしょう。
糖質制限を提唱する医療者によっても、糖質は50%以下に抑えたほうがいい、という人もいれば、なかには30%以下にすべき、という人もいて、信頼できる基準値がありません。
糖質制限を推奨する人たちがキモとする点は、エネルギー源としてケトン体が作られることです。
ケトン体は糖質の供給が減少した際に、糖に代わってエネルギー源とすべく脂肪(脂肪酸)から産生される化合物で、飢餓状態や高熱・嘔吐、激しい運動などをしたときに、体の緊急対応措置として作られるものです。