ANAがJALを「貨物特需」で圧倒できた2つの勝因 コロナ禍で需給逼迫、大型専用機はフル稼働

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方、JALは2010年の経営破綻を機に貨物専用機の運航から撤退し、旅客機の貨物室を活用した輸送に特化してきた。昨年10~12月には乗客なしの旅客機を「国際貨物専用便」として毎月1000便以上運航したものの、逼迫する需給環境に対応しきれず、需要の取りこぼしも多かった。

ANAのもう1つの勝因は、ダイヤ外の便を設定する機動力の向上だ。航空会社では予定にない便を設定する場合、パイロットの調整や機材の整備など、他の旅客便の運航にも関わる全社的なスケジュールの修正を要する。急な貨物便の運航のために、「ちょっと悪いけど来週の予定をずらしてくれ、といったことは(コロナ前なら)ありえなかった」(ANAカーゴの外山社長)。

”食いぶち”の貨物事業を重視

新型コロナの影響が深刻化した昨年春からしばらくの間は、突発的な貨物部門の要請に運航系の部門が対応しきれなかった。しかし夏から秋にかけて次第に順応が進む。貴重な食いぶちである貨物事業をグループ全体で重視し、貨物需要に合わせて柔軟に整備計画が調整できるようになった。外山社長は「手前みそだが、うちはマーケットの中で引き合いから運航まで一番早いと言われている」と胸を張る。

ANAが2019年に導入した大型貨物専用機のボーイング777F(記者撮影)

ANAの11機の貨物専用機はフル稼働が続き、第4四半期(2021年1~3月)の貨物収入は第3四半期の実績を上回るとみられる。個別事業の業績予想は非開示だが、少なくとも通期累計の貨物収入は前期比約3割増の1800億円程度となりそうだ。

目下、ANAは感染症の再来にも耐えられる企業体質への転換に向け、事業ポートフォリオの見直しやコスト削減などの構造改革中。中長期的な成長に向けても、現状のリソースで強化できる貨物事業の重要性は一段と増している。

次ページ大型貨物機の就航都市を続々と拡大
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事