ANAがJALを「貨物特需」で圧倒できた2つの勝因

コロナ禍で需給逼迫、大型専用機はフル稼働

ANAが貨物事業拡大へ仕掛けるのが、ボーイング777Fの世界各都市への運航実績の積み上げだ。2020年にドイツ・フランクフルトとタイ・バンコクへの運航を開始し、2021年4月にはアメリカ・ロサンゼルスへ同機を初運航する。

狙いは目先の収入だけではない。新しい空港に機材を運航させるには、到着後の貨物積み下ろしなどオペレーションに関わる準備・調整のほか、国の認可も必要となる。コロナ収束後も需要の変化を見て臨機応変にさまざまな都市へ貨物専用機を飛ばせるよう、今のうちに地域リスクを分散させる体制の構築を進めているのだ。

成田・羽田の首都圏と沖縄を2大拠点とする戦略も軌道修正する。需要の根強い成田はアジア・中国と欧米を結ぶハブ(拠点)機能のさらなる強化を狙い、貨物専用機を集約。一方、那覇空港を拠点とする沖縄は貨物専用機の発着を全便運休する。

那覇を貨物事業の拠点とする取り組みは、ANAと沖縄県の共同で2009年に開始した。国際宅急便の需要取り込みなどを狙い、深夜に那覇へ集まった貨物を翌朝、近距離のアジアへスピーディーに送り届けるモデルだった。

貨物輸送量で世界5位を目指す

しかし、ANAの想定を上回るペースで東アジア各地の空港が深夜発着枠を拡大。深夜帯にそれらの空港を発着するLCC(低コスト航空会社)が需要を奪い、早朝着を売りにした沖縄経由便の希少性は低下していった。

ANAカーゴの外山社長は「貨物専用機では、長距離路線を大型の777F、(製造業の盛んな)中国内陸部やアジアの市場を中型の767Fで開拓する」と意気込む(撮影:尾形文繁)

沖縄は拠点としての規模を縮小し、貨物専用機を利用しないモデルへと転換を進める。ANAは2020年11月にグループLCCのピーチ・アビエーションと貨物便としての共同運航を開始。貨物事業に未参入だったピーチは、充実した沖縄・東アジア間の路線網を抱える。これに目をつけた外山社長がピーチに頼み込み、実現させたという。

戦略を立て直したうえで、ANAは世界10位前後で推移する貨物輸送量を5位へと押し上げを狙う構えだ。

ただ貨物は感染症リスクこそないものの、景気の影響を強く受ける。コロナ禍以前には米中貿易摩擦の影響で貨物事業が弱含み、会社全体の業績予想の下方修正を強いられた。コロナ特需での貨物単価高騰が一巡した後も、機動的な路線戦略を打ちつつ機材稼働率を高められるかが事業拡大の試金石となりそうだ。

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