養殖量の制限やむなし、狭まるウナギ包囲網 おいしい鰻重や蒲焼きは今後も楽しめるのか

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そこで、12年からはウナギ資源を利用する日本、中国、台湾で、ニホンウナギの資源管理を目的とした3者協議が始まっている。現在は韓国も加わっており、今年9月に開かれる7度目の協議が焦点だ。9月の協議では、各国で養殖業者を含めた新たな組織を作り、その枠組みの下で養殖量を制限し、資源管理に取り組むことについて結論を出す方針だ。

国際的な枠組み作りの下地として、日本では6月20日に内水面漁業振興法が成立した。ウナギの養殖では許可と届け出の制度を創設し、生産実績の報告などを義務づけていく。水産庁は国内の養殖実態を詳しく把握し、養殖量を制限することで、大もとの稚魚の漁獲量を安定させようとしている。

資源量の把握が重要

今後のポイントは、水産庁が養殖量にどの程度の制限を設けるかだ。同庁の増殖推進部はこれについて、「9月の4ヵ国間の協議を経てから決めていく」と口が堅い。一方、「水産庁が定める制限量は、過去3年の養殖量の平均を目安にすると聞いている」(ウナギ関連の業界団体首脳)という話も漏れ伝わる。ただし、この首脳が「台湾の過去3年間の養殖量はほぼゼロで、日本が主張する基準だと台湾の制限が著しく厳しくなる」と言うように、養殖実績の違いから、4ヵ国協議で折り合いがつかない可能性もある。

北里大学の吉永講師は「資源状態を把握するため、闇取引や密輸入まで含めて稚魚の流通を把握する必要がある」と指摘する。現在、漁期に取れた稚魚の統計しかなく、天然の資源量を評価する数字が存在しないからだ。「資源量を把握できていなければ、規制をしたとしても、保護できているのかどうか評価すらできない」(吉永講師)。

冒頭の店主は「保護は大事だが、養殖量の制限でウナギの仕入れ値がさらに上昇するようだと、経営がいっそう苦しくなる」と複雑な思いだ。ただ、業界内でも「ウナギが枯渇すれば商売ができなくなる」と、規制による資源保護に理解を示す声も多い。これからもおいしいかば焼きやうな重が楽しめるのか。ニホンウナギが岐路に立たされているのは間違いない。

「週刊東洋経済」2014年7月12日号<7月7日発売>掲載の「核心リポート02」を転載)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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