投資信託等では、運用上のルールとして「1銘柄のウェートが10%を超えない」と定めることがあるが、日経平均はこのルールを逸脱している。ポートフォリオとしての、こうした「歪み」は、それが悪く働く場合もあれば、逆に幸いすることもあるのだが、一般的な投資の理屈から考えて気持ちのいいものではない。
投資家としてのもう1つの教訓は、株式市場での日銀の影響力がかくも大きいことを認識すべきだということだ。
日銀ETFのやっかいな問題とは?
現在、日銀は東証1部全体の時価総額の約7%を保有し、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を抑えて、日本最大の株式保有主体だ。黒田東彦日銀総裁は、日銀のETF保有は株式市場の機能を損なうほどではないと記者会見で述べたが、日銀のETF保有にはいくつかの厄介な問題がある。
まず、平均して7%、さらにGPIF分も合わせると十数パーセントの株式が、株式を市場で売らない「安定株主」に保有されていることは、企業の側から見てかなりの「安心材料」だ。企業買収されにくいし、株主総会ではETFを設定した運用会社が議決権行使をすることになるが、おおむね会社側の議案に賛成することが期待でき、アクティビスト(いわゆる物言う株主)などの株主提案が通りにくい。一般論として、企業経営者にこの種の安心感を与えることは好ましくない。
GPIFは、善しあしは別として(筆者は「あし」のほうに一票入れる)アセットオーナーとして投資先の企業に働きかける方針を明示しているが、日銀の保有する株式については、アセットオーナー・レベルでの議決権の空洞化が起こっていると判断せざるをえない。
日銀、GPIFいずれの株式保有も、国全体として見た場合の企業ガバナンスのあり方として望ましい状態ではない。民間で株式を保有し、民間が議決権を行使する形がより望ましいのではないだろうか。どちらの株式保有も、なし崩し的に始まって、気がつくと巨大化してしまった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら