うつのサイン「見逃して重症化する人」の盲点 不安緩和に効く妙薬は「何かに没頭する」こと

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どうすれば「うつ病のサイン」に気づけるのか?(写真:Graphs/PIXTA)
昨年9月、インターネットを通じて1万人余りを対象に厚生労働省が行った「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」によれば、「半数程度の人が何らかの不安等を感じていた(4月~5月では6割)」ことが明らかになった。
世界的流行から約1年が経つが、いまだ出口は見えない。落ち着くかと思えば、またぶり返す。一体、いつまで続くのか――、そんなイライラが募る日々が続いている。
「不安に加え、いらだちを覚える方も少なくないです」
そう語るのは、うつ病のカウンセリングや依存症の認知行動療法を専門とする『ライフサポートクリニック』(豊島区)の山下悠毅院長。不安とイライラにはどのような関係性があるのか、対処法を含め話を伺った。

――抑制された生活が続くことで、小さなことでも「イライラ」してしまう人が増えているような気がします。

イライラとは、状況や物事が上手くいかない際に出てくるネガティブな感情で、イライラしやすい状態を精神医学では「易刺激性」や「易怒性」と呼びます。原因としては、不快な出来事が起きたとき(いわゆるストレス)や、体調を崩したとき、睡眠不足、あとはうつ病や躁うつ病、てんかんや認知症の症状として観察されることも少なくありません。

――コロナ禍が長引く中で、ライフサポートクリニックにもイライラが止まらない、なんて方が訪れることはありますか?

たくさんいらっしゃいます。最近では中間管理職のような役職の方が多い印象です。新入社員のミスが気になってしまう、取引先の対応が悪くイライラしてしまうなど。世間的にテレワークが推奨されているとはいえ、職場に行かないと仕事にならない方はいまだに多い。規則を順守させたい企業と、「それでは仕事が進まない」といった個人との間にズレがあるようです。そのギャップに戸惑い、物事がうまく進まないことに対して苛立ちを覚える方が少なくないようですね。

一方、これは女性に多いのですが、テレワークが可能な職種にもかかわらず、出社を強要する組織や上司にイライラしている方も見受けられます。

「お金がなくて自殺をする」わけではない

――不安を原因として、イライラしやすくなるというのは、よくあることなのでしょうか?

イライラとは、物事がうまくいかない際の不快感情のため、不安が募れば人は必ずイライラします。

――では、イライラが原因で、精神疾患につながるといったことは?

過度なストレスによって、うつ病が引き起こされることは周知の事実でしょう。そうした観点から、イライラがうつ病の発症リスクにはなりえる。

うつ病で最も恐ろしいのは、自殺リスクの増加です。人はうつ病を患うと、「死んだほうが楽」と考えてしまう症状が出現しうるのです。コロナに限らず、「金銭的に困り自殺をした」といった報道は、誰もが耳にしたことがあるでしょう。

しかし、精神科医が対応する自殺未遂者の多くが、「お金がなくて自殺をする」のではなく、うつ病を発症した結果、「自分はお金がないので死ぬしかない」という妄想(貧困妄想)から、自殺(未遂)に至った方が多いのです。

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