うつのサイン「見逃して重症化する人」の盲点 不安緩和に効く妙薬は「何かに没頭する」こと

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――うつ病の初期サインとして、何が挙げられるでしょう?

睡眠障害が多いです。特に、「明け方に目が覚めてしまう」(早朝覚醒)が続いていたならば、早めに専門家へ相談することが大切です。また、もし「死にたい」といった相談を受けた方は、ただやみくもに止めるのではなく、この人は死にたいと表現してしまうほどのレべルで人生に絶望している――とその人の発言をくみ取り、「あなたが今とても辛い状況にあることは理解できました」と気持ちを受容したうえで、専門機関へつなげることが大切です。

どうすれば「不安」から解放されるのか?

――気持ちを理解することが大事なわけですね。イライラしている背景に不安がある……そういったケースでは、まず何から始めることがいいのでしょうか?

不安と恐怖を分けて考えることが有効です。なぜなら不安には「対象」がなく、恐怖には「対象」があるからです。高所恐怖、先端恐怖、閉所恐怖といった言葉があるように、恐怖には必ず対象が存在します。それゆえ、人は、恐怖に対しては何かしらの対処や対策が可能です。

一方、不安とは「対象なき恐怖」であり、自分自身がいったい何に恐れているのかを自覚することができていない状態です。現在も、世界中の方が新型コロナウイルス(以下、コロナ)に恐怖を感じています。

しかし、コロナはあまりにも未知なウイルスであるため、「コロナの何が怖いのか」については曖昧なんですね。日本人は欧米人より本当に感染しにくいのか、収束するのはいつなのか、効果的なワクチンや治療薬はできるのか、仕事や学校はどうなるのか、コロナ以前の日常に戻れるのか……など、誰もがこうした悩みを複合的に抱えている状態は、まさに「不安」と表現できるのです。

――なるほど。恐怖は理解できるのですが、不安は漠然としているだけに認識することが厄介です。自分が不安な状態にいる……、感覚的には理解している人は多いと思うですが、例えば生活に変化が生じるなどサイン的なものは表れるのでしょうか?

留意してほしいのは、「いつもと違う」という点です。生活の中で、いつもと違う傾向が出始めると、軽度のうつ症状のサインと言えます。症状は人それぞれですが、睡眠に関してなら、「明け方に目が覚める・お酒がないと眠れない・やたらと眠い」、食事に関してなら「食に興味がなくなる・食べたくないのに食べてしまう」などといった具合です。こういった傾向が、ほぼ毎日、連続して2週間続いた際は黄色信号です。

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