その後もデートを重ねながら、気づけばクリスマスが目前に迫った。街中にイルミネーションが輝き、デパートではジュエリーを選ぶカップルたちであふれている。どこか浮かれた気分になりそうなこの時期に、まだ判断を決めかねる三浦さんがいた。2カ月のリミットが近づき、紹介所にはさらにもう少しだけ待ってもらうように交渉。丸山さんにも直接そう伝えていた。
そうしてクリスマス当日。彼が予約してくれたフレンチレストランは、ワントーン明るさを落とした照明に、隣の席の会話が気にならないテーブルの距離感。ワインを選び、いつものように楽しく会話を続けていると、ふいに彼からプロポーズされたという。
「結婚してください」
ところが三浦さんの反応はというと、
「それが正直うれしくなかったんです。もう少し感動するものかと思っていましたが、なんだか重たく感じてしまいました……。そもそも返事はもう少し待ってと伝えていたはずなのに、このタイミングで?って。ありがたい話ですが、そう感じてしまった時点で違うんだなと、ようやく結論が出ました」
結局、結婚紹介所は退会し、丸山さんともそれ以降会うことはなかった。
立ち止まることにした彼女の本音
三浦さんは、なぜ立ち止まってしまったのだろうか。
「もっと感覚的な話をすればよかったのかなと思います。仕事や休日の過ごし方など、表面的な情報についてはたくさん質問しました。でも、例えばある場所に行ってどう感じたかとか、このニュースを見てどう思うか。どんなことに感動したり、嫌になったりするのか。そういった感覚的なこともっと話せば信頼関係が深まったのかもしれません。
でも……、やっぱり自分のゾーンに深入りされたり、自己開示することが苦手なんです。当たり障りのない会話に終わってしまっていたんでしょうね」
自分をどの程度、人に開示するか。どこまでお互いに立ち入るか。それは人によってかなり程度に違いがあるところだ。
口で言うのは簡単だが、その程度を探るのはとても難しい。それこそが、男女を問わず、人間同士の相性といっても過言でないかもしれない。
とくに夫婦となると、毎日の生活になるだけに、その相性は重要だ。「今日は何をした」という情報のやり取りで満足する人もいれば、「そこで何を考えたか」までを丁寧に聞きたい、聞いてほしい人もいる。
仕事で理不尽な目に遭って帰宅する日や、友人の家族に嫉妬する日。そんな心の内を誰かに聞いてほしくなったときに、聞いてもらえる相手かどうか。その価値観があうかどうかは、結婚相手を選ぶうえでもっとも大事なことの1つだろう。
三浦さんと丸山さんは、自分をオープンにしないタイプ同士、その温度差がなかなか埋めにくかったのかもしれない。
そもそも丸山さんに対して愛情はあったのか。「愛情かぁ……。一緒にいて嫌な感じはなく、憎めない人とは思いましたが。でも、相手を好きかと聞かれるとそうではなかったかもしれません」
今後いい人がいれば結婚したいが、今は積極的に出会いを求めて動いてはいないという三浦さん。丸山さんの経緯からか、もし結婚するとしたら、きちんと話し合いができる相手がいいと語る。
お互いをしっかり知っておきたいと思う女性と、伝えるべきことは伝えたという男性。相手と深い関係を構築することを望むなら、まずは自分自身の本音をどこまで語れたか、振り返ってみることも大事かもしれない。
結婚は、人間関係の延長線上にあるものだとしたら、自己開示の程度や、人との距離感について考えることはきっと欠かせないことだろう。
望む結果は得られなかったが、思い切って動いたからこそ、結婚に対して身軽になったと笑顔で振り返る三浦さん。彼女の学びが、次なる出会いにつながることを願ってやまない。
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