マンガ「釣りキチ三平」が秋田で生まれた理由

2020年11月に永眠した矢口高雄氏が遺したもの

「釣りキチ三平」などで知られるマンガ家の矢口高雄氏は、2020年11月に亡くなった。写真は2020年1月に矢口氏の自宅で撮影した1枚だ (筆者撮影)

2020年11月に亡くなったマンガ家の矢口高雄氏の作品「野性伝説 爪王」が、3月初旬に実施された広島県公立高校の国語の入試問題に引用された。

舞台は秋田県と山形県の県境にある奥羽山脈の雪深い麓、動物文学の戸川幸夫氏が紡いだ若鷹と老鷹匠の物語で、矢口氏が惚れ込んで作画した。引用は若鷹が宿敵の赤ギツネを倒したクライマックスのシーンで、矢口氏は原作にない老鷹匠のセリフを挿入していた。

高校入試に矢口高雄氏の作品が出題

そこから老鷹匠の心を推し量る出題で、矢口氏のストーリーテラーとしての手腕が光る場面でもあった。「野性伝説 爪王」は1990年代半ばに青年誌で連載され、2018年に山と溪谷社が復刻、版を重ねるヒットとなっている。

矢口氏は奥羽山脈の麓の、秋田県南部の豪雪地帯の出身で、代表作「釣りキチ三平」(1973~1983年、『週刊少年マガジン』連載)ほか一連の作品群は故郷が舞台、厳しい自然の現実に人はどう対峙すべきか、というメッセージが込められている。

筆者は全国紙の秋田支局長だった2016年から5年にわたり矢口氏を追いかけ、評伝『釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝』(世界文化社)を2020年12月に上梓した。作業が遅れ、出版は没後になってしまう。

矢口家を弔問した際の香典返しとして最近、ご遺族からクオカードが届いた。うち1枚には「寒スズメ」のイラストがあしらわれていた。鉛色の空の下、雪が降る中、木の枯れ枝で羽を休めるスズメたちを見上げる三平を描いている。

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