ドラッカーを知るには、論語を読め 安冨歩先生、新刊を語る

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孔子が私たちに伝えたかったメッセージとは

―― 本の帯に書かれた「孔子がインターネットを語ったら?」というコピーがありますが、この情報化社会について、孔子は実際にどんな風に語ると考えていますか?

 孔子は社会を P2P システムとして捉えています。それに対して法家は、サーバー=クライアント関係として捉えています。インターネット出現以前は、国家機構や組織は後者に大幅に依存せざるをえませんでした。しかしインターネット時代には、P2Pが主流になります。それはつまり、論語の思想が全面化する時代だと言っても良いのです。今こそ、論語が私たちにとって大切である物質的根拠がそこにあります。

 ―― 孔子とドラッカーは、後世に生きるわれわれに、結局のところ何を一番伝えたかったのでしょうか。

 勇気を持つことです。怯えてはいけません。怯えると現実が見えなくなります。現実が見えなくなると、虚像を現実だと思い込み、虚像に対応するための努力に全力を挙げることになります。そうすると全てはうまくいきません。何もかもがうまく行かなくなると、パニックに陥ります。

 こうなると、ヒトラーのような暴力的人物に頼りたくなり、国を滅ぼします。過ちに怯えることから、全体主義がはびこるのです。しかし、過ちて改めるなら、それは過ちではありません。自分を飾らず、過ちを認めて改める勇気をもつなら、我々は如何なる問題も乗り越えることができます。これが二人の思想の根幹だと私は考えています。

 ―― 本書をどんな方に読んでいただきたいですか?

「仕方ない」と思って砂を噛むような思いで生きている全ての方に。

安冨 歩 東京大学 東洋文化研究所教授

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やすとみ あゆむ / Yasutomi Ayumu

1963年生まれ。京都大学経済学部卒業後、株式会社住友銀行勤務。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、現職。著書に『生きるための論語』(ちくま新書)、『超訳 論語』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『生きる技法』(青灯社)、『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』(明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社)、『経済学の船出』(NTT出版)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『複雑さを生きる』(岩波書店)などがある。『満州国の金融』(創文社)で第40回日経・経済図書文化賞受賞。
 

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