「高齢社員を教育係にした」ある会社の大失態 「定年70歳」時代に企業が直面する不利益の正体

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「人件費の負担増はたしかに問題です。ただ、それよりも、体力・モチベーションが低下した高齢社員が増えることで、本人だけでなく職場の業務の生産性が低下することが心配です。高齢社員の実情に合わせて無理せず働いてもらうべきですが、技術も顧客要求も高まっており、高齢社員に合った仕事を用意するというのは、簡単ではありません」(精密機器)

最後に、全26社に「今回の法改正にどう対応しますか?」と訊ねました。

「未定、検討中」17社
「すでに対応を決定済み」9社

多くの企業がどう対応するか検討中のようです。また、「決定済み」という場合も、大きな制度変更を決定したということではなさそうです。

「当面は、現在の55歳役職定年、60歳定年、定年後は再雇用という骨格を変えないことに決めました。雇用延長の期間を5年伸ばすということです。長期的には職務給への転換や役職定年制の廃止など改革を進めたいのですが、いま働き方やコロナなど経営環境が激変しているので、少し様子を見て対応を考えていきます」(人材サービス)

メンバーシップ型からジョブ型へ

今後、人事部門は増加する高齢社員にどう対応するべきでしょうか。賃金制度については、改革の方向性は割とはっきりしている印象です。

「経営が厳しく、パフォーマンスが落ちた高齢社員を高待遇で雇い続ける余裕はありません。現在は職能給がベースですが、年齢に関係なく各人の働きに見合った報酬を支払うよう、職務給あるいは成果給に転換することを検討しています。職務給あるいは成果給になれば高齢社員は大幅な賃下げになります」(エネルギー)

日本企業は、職務範囲を職責・役割を明確にせずに従業員を雇用するメンバーシップ型で、集団的な仕事の進め方をしてきました。ところが、近年の働き方の多様化、技術の高度化、グローバル化、そしてテレワークの浸透によってメンバーシップ型が機能不全になり、個人毎の職務を明確にするジョブ型の有効性が高まっています。

日本では、主要企業の約8割が職能資格制度を導入しており、現場の作業員は年齢とともに熟練度が上がるという想定から、職能給を年功序列的に運用してきました。

今後、欧米のようにジョブ型になると、職務給や成果給が広がって行くと予想されます。すでに日立製作所・富士通・資生堂などがジョブ型への移行と賃金制度の変更を表明・実施するなど、「メンバーシップ型からジョブ型へ」が大きなうねりになろうとしています。

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