男女の平均勤続年数差の解消も目標にすべきだ 現状は女性の就業者数、就業率しか見ていない

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そこで、今回は女性の退職率が男性のそれと一致する(退職率が下がる)と仮定して、両者のギャップが埋まるスピードをシミュレーションした。

ここで、平均勤続年数は①式のように表すことができる。仮に、t-1年からt年にかけての平均勤続年数(x)が一定で、就業者数も一定(退職者数/就業者数=新規就業者数/就業者数=1/y)とすると、①式は②式のようになり、「x=y」との関係が導ける(③)。

つまり、前項でシミュレーションした男性の平均勤続年数が横ばいとのシナリオ(女性の平均勤続年数が男性を超えるのは「2061年」)では、男性は毎年就業者の1/13.8が退職(新規就業)するという条件を置いていたということになる。

長期目線での政策アプローチが必要

では、女性についても就業者数が変わらないとの前提のもと、毎年1/13.8が退職(新規就業)するという条件を置くと、平均勤続年数はどのように変化するのであろうか。そのシミュレーションの結果は、「2038年」に女性と男性の勤続年数の差が1年を切り、ほぼ同水準となることがわかった。

このシミュレーションでは、女性の退職・新規就業環境が即時的に男性と同一のものとなるという仮定を置いている。実際には退職率は徐々に変化するだろう。その場合、男女間の平均勤続年数差の改善には20年以上かかる可能性が高い。このような観点から、「女性の社会進出」は息の長いテーマとして、腰を据えた長期目線での政策アプローチが必要であるといえよう。
 

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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