1月12日に日本銀行が公表した『生活意識に関するアンケート調査』(2020年12月調査、調査期間は2020年11月6日~12月2日)では、「1年前に比べ、物価は何%程度変化したと思うか」という設問に対して、回答は平均4.5%と、前回調査(2020年9月)の同5.1%から低下した。もっとも、2016年以降は4~5%を中心としたレンジ内で推移し、人々の「実感インフレ率」は高止まりしている。総務省が発表している全国CPI(消費者物価指数)のコア指数(生鮮食料品を除く)は2020年12月で前年同月比マイナス1.0%と下落が続いている。
人々の「実感インフレ」を高止まりさせている要因は主に2つあると筆者は考えている。1つ目は、景気が悪くなって消費マインドが悪化すると人々が「物価が高い」と感じ、それがアンケート調査ベースの「実感インフレ率」に反映されてしまう可能性である。本来であれば「物価の高さ」と「インフレ率」はまったくの別物なのだが、回答者が両者を混同している可能性がある 。
2つ目は、回答者が想定している「物価」がCPIとは異なる可能性である。例えば、足元でCPIは下落しているものの株式・不動産などの資産価格は上昇が続いている。回答者がこれらも「物価」に含めて答えている場合、調査結果は上振れしやすくなる。
これらのうち、今回は2つ目の「人々が意識している物価」について分析してみたい。
「株価」「住宅価格」などを含む「拡張CPI」を作る
CPIが下落しているのに対して足元で価格が上昇しているものといえば、「不動産価格」「株価(有価証券)」が代表的である。他にも、人々が「物価」と混同して「高い」(価格が上昇している)と感じそうなものとしては「直接税」や「社会保険料」もあるかもしれない。
今回は、通常のCPIにこの4項目を追加することで、人々の実感に合う「拡張CPI」を作成してみた。具体的には、「消費支出」「直接税」「社会保険料」「有価証券」「不動産」の5項目を総合して、人々は「物価」を考えていると仮定した。
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