人々はなぜ「インフレ率」を高く感じているのか 「株」「住宅」価格の高騰を物価指数に入れてみた

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これらの指数とウェイトを用いて「拡張CPI」を作成してみた。2012年以降に拡張CPIとCPIコアとの乖離が大きくなり、直近では8%程度の乖離があることがわかる。

また、前年同月比を求めると2013年以降ほぼ一貫してCPIコアの前年同月比を上回った。株価や不動産といった資産価格や税金・保険料の負担率上昇により、「拡張CPI」はCPIコアで計測されるよりもインフレ率が高いということがわかる。

なお、2013年から2014年および2018年には「拡張CPI」の前年同月比は日本銀行が目標とする「2%」をわずかに達成した局面があった。資産価格(有価証券や住宅価格)の上昇によってもたらされた物価目標の達成は決して望ましいものではないが、「日本銀行の異次元緩和は資産価格の上昇を通じて目標を達成していた」と言うことは可能である。

「実感インフレ率」を「拡張CPI」で説明可能

「拡張CPI」の前年同月比は、CPIコアと比較すれば高止まりしている。日本銀行の調査において人々の「実感インフレ率」が高止まりしている要因の1つである可能性は十分にあるだろう。

逆に、人々の「実感インフレ率」の高止まりが資産価格の上昇によるものだとすると、市場価格が崩れてしまえば「実感インフレ率」もたちまち低下してしまうリスクがあるとも言える。今後は、資産価格の下落局面においても「拡張CPI」と人々の「実感インフレ率」が連動するのかを確認する必要がある。 

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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