テレビが震災特番で伝えた3.11から10年の重み 「美談」を安易に持ち出さず、外さなかった本質
フジテレビは11時55分~19時にかけて、「東日本大震災10年。私たちは…わすれない。3.11特別編バイキング×イット!」を放送。
番組は3部構成で、最初の「バイキングMORE」では、坂上忍さんとサンドウィッチマンが震災遺構の大川小学校などを訪問。続く「わ・す・れ・な・い 未来へ…10年目の総検証」では、複雑な津波、一番高い津波、遅れてきた津波、低い津波、引き戻す津波、いちばん早く来た津波、繰り返す津波の7つの津波を検証し、「1つとして同じ津波はない」という教訓を改めて提示しました。
最後の「イット!特別編」では、「未来へつなぐ震災10年」と題して加藤綾子さんが岩手県陸前高田市で「命を救ったビル」をレポートしたほか、榎並大二郎さんが福島第一原発に通算3度目の取材。全編を通して、「当時の映像を中心に、被災者たちの声を交えて現状を伝えていく」という奇をてらわないオーソドックスな構成が目立ちました。
「釜石の奇跡」と称された彼女の心苦しさ
そしてTBSで「釜石の奇跡」という美談を否定した女性がこの番組にも出演。彼女は児童と教職員あわせて84人が津波の犠牲となった宮城県石巻市の大川小と比較されて、「釜石の奇跡、大川小の悲劇」と言われることに心苦しさを感じていました。しかし、「一生お話できないだろうなと思っていた」という大川小遺族との交流が昨夏からスタート。立場は違っても、防災にかかわるスタンスでわかり合えたことで、10年の月日を経て一緒に活動をしていく様子が紹介されました。
女性は「周りの人を助けようとして亡くなった子どもたちもいます。今まで“奇跡”と言われる中で、この子たちの存在を隠し続けなければいけないつらさもありました」と、ここでも本音を吐露。“奇跡”の違和感を明かすとともに、“奇跡”に頼らず生還することの大切さを語っていました。
これを見たジャーナリストの柳沢秀夫さんは、「われわれは伝えるために言葉を使いますよね。たとえば今でも“奇跡”とか“悲劇”という言葉を。でも、そういう言葉でくくってしまうと、その中にあるいろいろなものが見えなくなってしまったり、あるいは違和感になってしまったり、ということがあると思います」とコメントしていました。
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