テレビが震災特番で伝えた3.11から10年の重み 「美談」を安易に持ち出さず、外さなかった本質

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次にテレビ朝日は13時50分~15時43分にかけて、「あの日から10年~東日本大震災 スーパーJチャンネルSP」を放送。番組テーマに「10年目の幸福論」を据え、司会を小松靖アナと林美沙希アナ、コメンテーターを大谷昭宏さんが務め、渡辺宜嗣アナが宮城県気仙沼市からリポートしました。

主な放送内容は、10年前の映像を振り返ったあと、「極限状態で見えた人間の選択」にスポットを当てたほか、「被災者がどんな瞬間に幸福を感じているのか」という切り口で現地取材を敢行。また、緊急事態宣言中の1都3県183の自治体に緊急アンケートを実施し、避難所や備蓄などの現状と課題などを紹介しました。

リアルでシビアな「10年目の幸福論」

さらに、10年間被災地の現状を伝え続けてきた渡辺宜嗣アナによる「住民孤立の島」のリポート、岩手県釜石市で中学生時代に被災して震災体験の語り部となった女性が、コロナ禍で来館者が激減したもののオンラインで活動を続ける姿、空から見る被災地の10年の映像などを放送しました。

なかでも気になったのは、全編に盛り込まれた「10年目の幸福論」。幸福というテーマであるにもかかわらず「幸せがわからなくなってしまった」「建物がきれいになっても人が戻ってこない」「当たり前のことって当たり前じゃないんだな」などと嘆く人が目立つなど、美談に偏ることなく、被災者のリアルな心情を映し出していました。

最後に渡辺宜嗣アナが「震災10年は節目ではありますが、あくまで通過点。これからも取材を続けていこうと思います」と迷いなく語り、番組は終了。日本テレビの藤井貴彦アナと同様に、冷静さが求められるキャスターがあえて使命感を前面に出したメッセージは、「絶対に風化させない」という宣言のように見えました。

TBSは13時55分~15時49分にかけて、「Nスタスペシャル・東日本大震災10年~つなぐ、つながる~」を放送。番組は女優の杏さんによる「『千年に一度の大地震』と言われる東日本大震災。そこには故郷の味を取り戻すため奮闘する生産者が。エールを送り続ける人たちがいます」というナレーションからスタートしました。

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