西武ライオンズ「ドーム改修」で大胆な変貌の訳 野球観戦の楽しさだけではない施設の魅力演出

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西武ライオンズはFA移籍する選手を無理に引き留めない姿勢を堅持している。一昨年も主力打者の浅村栄斗が楽天にFA移籍したが、練習施設のさらなる充実で、有力選手が移籍しても実力ある選手を次々と育成しようという考えだ。

NPB各球団は21世紀以降、ファンクラブを中心としたリピーター層に濃密なマーケティングをすることで、顧客を獲得してきた。ロイヤルティが強いリピーターへのアプローチは効率がいいが、そろそろ各球団ともに飽和状態が近いと思われるようになった。

その矢先の新型コロナ禍で、各球団は大打撃をこうむった。また人々の行動変容が進む中で、従来の派手な応援スタイルは当分できなくなった。ファンクラブを中心とした今のマーケティング戦略が、コロナ明けも通用するかどうかは、予断を許さない。

西武ライオンズが今回の大改修を始めたのは、辻発彦監督が就任した2017年だ。そのころは新型コロナ禍の兆しもなかったが、結果として西武は「次世代型ボールパーク構想」の先陣を切る形となった。DeNAや日本ハム、楽天なども同様のリニューアルを進めているが、これが新しいNPBのトレンドになっていくだろう。

新しいNPBのビジネスモデルに

新型コロナ禍が収まらない中での大改修となったが、当面は5000人上限の観客数となる。さらに親会社も業績が悪化している。竣工式で取材陣から「不安はないか?」との質問が飛んだが、球団オーナーで、西武ホールディングスの後藤高志社長は「ありません」と即答した。

西武グループは、所沢エリアの再開発に着手している。所沢市は単なるベッドタウンから、「生活する、遊ぶ、学ぶ」リビングタウンへと進化すべきだとしているが、メットライフドームはその中核施設と位置付けられるのだ。後藤社長は「西武ライオンズから勇気をもらった」と話したが、マインド的にもライオンズが西武グループ、そして所沢エリアのフラッグシップ的存在になることを目指しているのだ。

21世紀に入って、MLBはそのビジネスモデルを劇的に変化させた。それに比べればNPBは、遅々として進化していない印象があるのは否めない。そんな中で西武ライオンズの本拠地大改修は、新しいNPBのビジネスモデルの嚆矢となるだろう。

「攻めの姿勢」がはっきりしたライオンズ。今季のペナントレースだけでなく、ビジネスモデルの成り行きまで、注目して見ていきたい。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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