こうした「野球周辺のアミューズメント、ファッションの充実」は、何を目的としているのか。
筆者は「西武を応援したいから西武鉄道沿線に住んでいる」というファンを何人も知っているが、ライオンズは、このような地元中心の熱烈なファン層によって支えられてきた。彼らがヘビーユーザー、リピーターとなることで固定客を獲得してきた。
しかし、固定客は年々高齢化する。さらに既存の顧客層には新型コロナ禍の経済的な影響が及ぶことも考えられる。そんな状況では、新規顧客、とりわけ将来につながる若年層の顧客の獲得は、重要な課題だった。
大型遊戯施設やトレイン広場、ショップの充実は、野球にそれほど興味がない子どもや女性が、家族連れで来場して楽しい時間を過ごすことで「西武ファン」へと育つことを考えた次世代戦略であるといえよう。
他球団でもこうした試みは行われているが、西武グループは西武球場前駅周辺に広大な土地を有しているので、思い切った増設、改修が容易だったのだ。
12球団唯一の「芝生席」は姿を消した
球場内に目を転じれば、昨年までと明らかに異なっているのが外野席だ。メットライフドームと言えば、ドーム球場になる前から「芝生」が名物だった。家族連れやグループ客が芝生にシートを敷いて思い思いのスタイルで観戦する姿が見られたものだ。
しかし今回の改修で12球団唯一だった「芝生席」は姿を消して、すべて椅子の指定席になった。
芝生の時代は、チャンスが来ると立ち上がって応援するのがスタイルだったが、椅子席でもそれができるように椅子の設計に工夫が凝らされている。しかし「芝生で観戦」という伝統的なスタイルは一掃された。
さらに、ネット裏を中心にエグゼクティブシート、プレミアムシート、パーティテラスなどクッションのきいた豪華なシート席が多数新設された。
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