西武ライオンズ「ドーム改修」で大胆な変貌の訳 野球観戦の楽しさだけではない施設の魅力演出

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極めつきは、ホームベースの真後ろ、両軍ベンチの真横に設けられたエキサイトシートだ。アメリカン・エキスプレスとタイアップしたこの席からは、捕手の目線で投手や打者のプレーをつぶさに見ることができる。さらにその裏にはラウンジがあり、ビュッフェスタイルのレストランやバーが設けられている。

アメリカン・エキスプレス プレミアムエキサイトシート(写真:西武ライオンズ提供)

一三塁側の飲食施設も大幅にリニューアルされた。一塁側にはNPB球団本拠地としては初めての「MLB café SAITAMA」が、三塁側には英国風スポーツパブの「HUB」が出店。スタジアムグルメは77店舗、メニューは1000種類以上とこれも12球団最大級になった。

こうした大規模なリニューアルは、スタジアムを単に「野球を観戦する」ための施設ではなく、「野球の試合中に、多彩な楽しみを提供する」施設へと変貌させることを意味している。さらに、センターバックスクリーンの「Lビジョン」は、ほぼ倍の面積となり、試合のデータやプレーの画像などを大迫力で見ることができる。「試合観戦」そのものもグレードアップしているのだ。

客数だけでなく「客単価アップ」を目指す

改修前の2019年には、公式収容人数は3万2725人だったが、改修後は3万1552人になっている。近年、プロスポーツの本拠地スタジアムでは改修によって客席数が減少するケースが散見されるが、プレミアム感のあるシートの増設や、ショップ、飲食などの充実によって「客数」だけでなく「客単価」のアップを目指している。なお、新型コロナ禍の影響で、一部、開幕後も使用できない施設がある。

西武ライオンズの二軍球場である西武第二球場は、メットライフドームに隣接していたが、お世辞にも充実した球場とは言えなかった。入場は無料だったが、観客は芝生や土の上に腰を下ろして試合を見ていた。

今回バックネット裏に、小ぶりながらも240席の観客席を設け、有料で販売することになった。またワイドなセンターバックスクリーンも設けられ、ネーミングライツによって2020年3月から「CAR3219(カーミニーク)フィールド」と名称も変わった。

一軍と二軍の施設が同じ場所にあるのは、12球団でも西武だけだが、両施設の一体化を図ることで多様なファンの取り込みを図ろうとしているのだ。

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