感染者の自殺率が上昇「猫の寄生虫」の怖い生態 人の脳を占拠、マインドコントロール状態に

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宿主の行動を支配する微生物は、ほかにもいろいろわかってきています。たとえば「ディクロコエリウム」という槍形(やりがた)吸虫(きゅうちゅう)がアリに寄生すると、普段は葉陰にいるアリが目立つ場所に移動するなど行動が変わります。すると、牛や羊が葉もろともアリを食べることで、寄生虫は宿主を他の動物に乗り換えて繁殖することができます。

トキソプラズマも狂犬病も、日本では感染する可能性が少ないと思われますが、わずか1000分の数ミリの微小な原虫に、万物の霊長とふんぞり返っている人間が性格まで操られるというのはホラー物語ではないでしょうか。

(画像提供:KADOKAWA)

日本人に最も身近な感染症「ピロリ菌」

人体は「常在菌」と呼ばれる1000種以上の微生物で満ちあふれています。胃の中にいる常在菌の一つが「ヘリコバクター・ピロリ」、通称ピロリ菌です。今や日本人に最も身近な感染症といっていいかもしれません。

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多くの人が持っている菌であり、健康診断で、菌の検査や除菌を勧められた人も多いのではないでしょうか。

19世紀以来、胃の中に螺旋(らせん)状の尾を持つ細菌がいることはわかっていましたが、たまたま居合わせたものと信じられていました。胃液の主成分は塩酸です。空腹時にはpH1~2という強酸性になります。

このような強酸性の環境に生きている細菌がいるとは考えられず、胃炎や胃潰瘍(いかいよう)はストレスが原因とされていました。

その後、オーストラリアの大学教授がピロリ菌の培養に成功。胃がんや十二指腸潰瘍、慢性胃炎を引き起こしていることがわかってきました。

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