感染者の自殺率が上昇「猫の寄生虫」の怖い生態 人の脳を占拠、マインドコントロール状態に

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ピロリ菌は民族によって遺伝子の変異が異なっており、これをもとに人類のたどった足跡を推測する研究があります。なかでも大分大学医学部の山岡吉生教授はピロリ菌から人類の壮大な移動経路を描き出しました。

それによると、私たちの祖先がアフリカを出た5万8000年前ごろからピロリ菌は人類とともに広がり、3万年前にはアジアに到達、5000年前ごろには東アジアや太平洋一帯に広がりました。

5300年前のミイラからも発見

もう一つの経路は、アジアからシベリアを通り、当時陸続きだったベーリング海峡を渡って、北米から南米へと南下したというものです。古くから人びとを悩ませてきたらしく、5300年前の氷漬けのミイラの胃の中からもピロリ菌の遺伝子が見つかっています。

(画像提供:KADOKAWA)

ピロリ菌そのものは、2~3回ねじれた形状で、4~8枚の鞭毛(べんもう)を持っています。私はこれまで、健康診断でピロリ菌は一度も見つかっていませんが、ピロリ菌をもっていない人は食道炎や十二指腸潰瘍に悩まされることがあります。ピロリ菌は過剰な胃酸を中和して、胃液の逆流を防ぐ効果があり、アレルギーを抑える、という研究者もいます。意外に役に立っている面もあるのです。

(画像提供:KADOKAWA)
石 弘之 ジャーナリスト

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いし ひろゆき / Hiroyuki Ishi

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問、東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授などを歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史(共著)』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』『砂戦争 知られざる資源争奪戦』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

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