中国湖北省の武漢市が半導体産業の育成を目指し、鳴り物入りで推進していた「武漢弘芯プロジェクト」。その事業主体が、社員の全員解雇に踏み切ったことが明らかになった。2月26日午前、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)を利用した社員向けチャットグループに解雇通知が送信された。
財新記者の取材に応じた社員によれば、解雇通知には「会社は生産を再開する計画がない」ことが明記され、全社員に対して2月28日までに退職届を提出し、3月5日までに手続きを完了するよう求めたという。
「解雇に伴う補償の提示は一切なく、経営陣から経緯の説明もまったくない」と、この社員は不満を隠さない。財新記者が武漢市の所管部門である東西湖区政府に問い合わせたところ、「すべて法律に基づいて対処している」との形式的な回答しか得られなかった。
事業主体は正式社名を武漢弘芯半導体製造(HSMC)といい、2017年11月に発足。当初の触れ込みでは総額1280億元(約2兆1043億円)を投じ、回路線幅14nm(ナノメートル)および7nm以下の最先端の半導体製造工場と、完成したチップを検査・封入するパッケージング工場を建設する計画だった。
創業者は半導体業界で無名の人物
武漢市政府は過去の宣伝で、武漢弘芯を2017年および2018年の同市最大の投資プロジェクトだとアピールしていた。また、湖北省政府も2018年と2019年の重要建設プロジェクトとして位置づけていた。
しかし半導体業界では、その計画に当初から疑念を抱く向きが少なくなかった。というのも、HSMCの2人の創業者は業界内ではまったく無名の人物で、バックグラウンドが謎に包まれていたからだ。14nmと7nmのプロセス技術をどこから導入し、エンジニアのチームをどう確保するのかも不透明だった。
それから3年余り。武漢弘芯プロジェクトは第1期工事の途中で資金ショートに陥り、工場が未完成のまま事実上頓挫した(訳注:詳しい経緯は『中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機』を参照)。
HSMCの法人登記簿によれば、同社の株主は数回にわたって変更され、東西湖区政府の保有比率が当初の10%から現在は100%になっている。
経営陣も、創業者を含むかつてのメンバーはすべて退任。区政府の国有資産監督管理部門が派遣したチームが取って代わった。全社員を解雇した後、区政府はプロジェクトの後始末をどのように図るのか、次の一手が注目される。
(財新記者:劉沛林、羅国平)
※原文の配信は2月26日
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