渡邉氏の講演には、伏線があった。総会中の質疑応答で、教員をしているという株主から、こんな質問が出た。「生徒からぜひ質問してほしいと頼まれたのでぜひ聞きたかったのだが、『24時間365日死ぬまで働け』という理念は今でも残っているのか」。
これに対して、清水邦晃・常務取締役は「この言葉はもともと創業者の思いで、ずっと労働をしろという意味ではなく、お客様のことを週2日休む中でも心に留めながら、その思いを忘れないでほしいという意味が込められている」と説明した。実際、5月には外部の有識者委員会からの指摘も踏まえ、同社の理念集から「365日24時間死ぬまで働け」という文言は削除され、「働くことは生きることそのものである」と改められた。
渡邉氏が分析した居酒屋の現状
だが、この質問に渡邉氏は黙っていられなかったのだろう。講演会では、自身が立ち上げた「和民」など居酒屋業態の不振についても言及。渡邉氏は「週3回以上お酒を飲む男性の割合は2003年に35%だったのが、今は15%に減った」と習慣的にお酒を飲む人が減ったと説明。さらに「ラーメン屋でも、コーヒーショップでも、お酒が飲めるようになった」と述べ、居酒屋同士のみならず、業態を超えた競争が厳しくなっていると分析してみせた。
ワタミの2013年度業績は、売上高こそ1631億円と前期比3.4%増だったが、主力である和民業態の不振などで本業の儲けを示す営業利益が29億円と、同68.1%減となった。さらに、店舗閉鎖などに伴う減損損失などが膨らみ、49億円の最終赤字を計上した。
配当についても、当初は1株当たり25円の普通配当に5円の創業30周年記念配当を加え、年間30円を予定していた。しかし、第2四半期の決算を発表した昨年11月上旬には業績低迷を理由に記念配当を取りやめ、普通配当も25円から15円に減配するという修正を発表した。
今期(2014年度)の業績見通しが達成された場合、次回の株主総会は再び両国国技館で行うのかという質問に対しては、「今期の20億円という当期純利益という目標は確実に達成したい。ただ、また国技館で総会をやるという理解を得られる水準ではない」(桑原社長)と回答し、両国国技館で次回の株主総会を開催することは厳しいとの見解を示した。
総会における現経営陣の平身低頭ぶりと、講演会での創業者の饒舌との対比が印象的な、今年のワタミの株主総会だった。
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