ただ幸いなことに、寧音さんにはつらいとき何でも話せる相手が、何人かいるといいます。友達や彼氏、施設の元職員さんが、寧音さんの話をいつも聞いてくれるのです。
「本当にちょくちょく、その友達とかに話を聞いてもらって、『これ(母が)おかしいよね? 私、これ断っていいんだよね?』とか確認する作業をしています。『それはお母さんがおかしいよ、全然断っていいよ』みたいなことを言ってもらいながら、やっとここまで来た感じ。もしそういう支えになってくれる人たちがいなかったら、母に押し切られて宗教に入っちゃったりしたかもしれないなって」
おかしいのは寧音さんでなく母親だということは、他人が見れば一目瞭然ですが、家族の中だとわからなくなりがちです。信頼できる人に客観視してもらうのは、とても必要なことでしょう。
自分を認めながら、広い世界へ向かっていく
「私、親から『産まなければよかった』とか言われたことがあるんです。そのときは、言われている自分を上から見ているような感覚で、何も感じなかった。それほどつらかったのだと思います。でも今は、生まれてこなければよかったとは全然思わないんです。
もちろん私の過去のつらい体験は、絶対にないほうがよかったんですけれど、でもそれがあって今ここにいる、みたいな。私の場合、母は自分がしてきたことを何一つ覚えていないので、私が言わないと、全部なかったことになってしまう。それが嫌で、こうして人に話したい気持ちもあるんだと思います」
寧音さんは今でも、昔母親から受けた暴言や暴力を夢に見るといいます。過去を語ることで彼女は、自分を否定せずに認めながら、より広い世界へ向かおうとしているのかもしれません。
最近はコロナのせいで「いつも会えていた友達とあまり会えなくなったりして、落ち込んでしまう」と話していた寧音さん。彼女のような若い子たちが、友達と気軽に話せる状況が戻ってくるよう、せめてコロナが早く収束することを願います。
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