役所も災難でしたが、寧音さんが受けた苦痛の比ではありません。
性被害が終わったのは、寧音さんが小6のときでした。母親に面と向かって兄の行為を伝えたところ、「母もさすがにヤバいと思ったのか」児童相談所に相談したため、寧音さんは一時保護所に、兄は児童養護施設に入ることになったのです。
施設から高校、大学に進学へ
3カ月後、寧音さんは一時保護所から家に帰りましたが、兄はそのまま施設から戻りませんでした。「ターゲットが減った」ため、母親から寧音さんへの暴力はよりエスカレートしましたが、逃げ場はありません。児童相談所の人との面談はありましたが、もし母の虐待を告げれば、また一時保護所に入れられてしまいます。それは寧音さんにとって、最も避けたいことでした。
「一時保護所が、私はすごく嫌だったので。先生とか職員の人とか、ものすごく怖かったんです。決まりも変に厳しいし、子ども同士もバチバチして告げ口をし合うし、学校にも全然通えない。私は学校が好きだったので、友達と会えないとか、そういうほうが嫌だったから、(母にされたことは)あまり具体的には言わなかったですね」
しかし結局、寧音さんは中学2年の途中から、児童養護施設に入ることになりました。母親が当時付き合っていた男性の家に行ったきり、家に帰らなくなってしまったのです。児童相談所の職員に、一時保護所には行きたくないこと、いまの中学に通い続けたいことを訴えたところ、しばらくは近所の里親家庭にいられたのですが、その後はどうしても、別の区にある児童養護施設に行かざるをえませんでした。ですが幸い、それは「とてもいい施設だった」といいます。
「最初のころは毎晩泣いて、『戻りたい、戻りたい』ってずっと言っていたんですけれど。転校した先の中学校では、ちょっといじめみたいなこともあったりして、本当になじめなくて。でも学年が変わってからは友達もできて、わりと楽しくやれるようになってきました。今も本当に感謝しているのが、施設の先生が教えるのもすごくうまくて。私、それまで理科や数学で0点とか2点とか取っていたんですけど、次のテストで70点くらいになったんです。それはすごい楽しかった。勉強楽しいじゃん、ってなりました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら