このプロフィール記事を読んだ真一さんは、当時43歳という年齢と住んでいる都市名、そして勤務先情報を伝えつつ、以下のようなお見合い申し込み文を書いて送ってくれた。少し長文になるが一部を紹介したい。
<武田さんが記載されている「家族仲のよさ」についてですが、普通に良好だと思います。18歳から実家を離れ、一人暮らしをしているため、父母や妹と会うのは年に2回くらいで、あまりべたべたするというものでもないのですが……。
(中略)
「収入」については、現在500万~550万円くらいです。武田さんの年収より、若干多いくらいではないかと思います。金銭感覚についてですが、個人的にはあまりぜいたくするという感じではないと思います。父母がきちんと貯蓄をして生活するタイプだったので、その影響を受けているだと思います。
(中略)
「1人の時間にあまり苦痛を感じない」というのも共通点かと思いました。「みんなでワイワイ」という感じも嫌いではないですが、1人でテレビを視たり、映画を観たり、本を読んだりするのも好きです。武田さんがお書きになっている「孤独のグルメ」は、私も好きでよく観ています。
(中略)
どんなことでも「知らないことを知る」ことに対して、楽しみを感じます。人の話を聞くことも好きですし、新しい体験をすることも、新しいことを学ぶことも好きです。とはいえ、「のめりこむ」ということはあまりなく、自分の中で答えや納得感が得られれば、そこで満足するといった側面もあります。
「広く浅く」といった感じでしょうか。仕事でも、こうした特性が周りから目に付くようで、新しい業務を自分なりに調べて、データを分析したり、企画を立てたりといったことを任されることが多いです。(後略)>
心に「刺さった」、ある一言
お見合いを仲介するためにこの文章を読んだとき、真一さんの素直さと知性を筆者は感じた。留美さんが知りたいことには丁寧に答えて、自慢も卑下もしていない。自分の好奇心を「広く浅く」と客観的に評しているのも面白いし、その特性を淡々と仕事に生かしているのは心強い。
「長文でしたが誠実さが伝わる文章で好感度が高かったです! でも、Zoomお見合いでは真一さんのよさにあまり気づけませんでした。表情が堅くて会社の面接みたいだったからです。先に進むべきかわからなくて、マチコ先生に相談しました。マチコ先生は私の心配性なところをすぐに見抜いてくれたので信頼しています」
マチコ先生とは筆者と一緒に世話焼き活動をしている婚活パーソナルトレーナーのことだ。お見合いのセッティングや伴走、伝言、アドバイスなどを一手に引き受けてくれている。情熱はあるが個人主義的な性格の女性である。留美さんにこんな助言をした。
「相手も緊張していたはず。1回でNGにするのはもったいないですよ。そもそも相手が武田さんを気に入るとは限りません」
相手があなたを気に入るとは限らない――。少し突き放したようなコメントだが、あれこれ考えすぎてしまう留美さんの心には「刺さった」らしい。交際や結婚は自分だけで決めるのでないことを改めて認識し、留美さんは急に気楽になり、「また話してみよう」と思った。
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