63歳の親との「実家じまい」で得た意外な気づき

コロナ禍で会えない中、近くに呼び寄せる手も

親を呼び寄せる際の心配事の筆頭は金銭面。もしも子供が都心部に住んでいれば家賃は確実に地方よりも割高だろう。

しかし家賃以外の生活のコストを見ると、実は都心部もそれほど高くない。生鮮食品などの日用品は価格競争の激しい都心部では相当抑えられているので、地方とほとんど変わらない。また地方は移動コストがばかにならない。車を所有することは大きな金銭的負担になるし、公共交通機関の利用料も都心よりも地方のほうが高額になりがちだ。

『両親が元気なうちに”実家じまい”はじめました。』より

大井さんの両親のケースでは、持ち家から賃貸になった分の家賃が14万6250円増え、車の維持費がなくなった分、11万6350円減った。大分と東京の生活費総額の差額は約5万円の費用増になる。しかしながら大井さんの両親の東京の家賃は、都内中心部の平均値に近い。同じ都内でも周辺部の地域にすればもう少し家賃の節約ができそうだ。

高齢者への住宅の”貸し渋り”は社会問題

大井さん一家が”実家じまい”をして上京するなかで、いちばん困ったのが東京の賃貸住宅探しだ。上京当時両親は63歳と若く、いたって健康だったが、不動産業者に次々と断られたという。結局5つ目の不動産会社で、保証人と契約者を子どもたちにすることを条件にようやく契約がかなったそうだ。

「我が家は堅実な職業についていた弟が保証人になったことで家が借りられましたが、もしも私が1人で両親を呼び寄せていたら、家が借りられなかったかもしれません。両親は見た目にも若々しく健康なので、それでも、まったく部屋が借りられないことがショックでしたね」(大井さん)

高齢者への住宅の貸し渋りは社会問題になっている。65歳以上を対象とした賃貸情報サイト「R65不動産」のような取り組みもあるが、社会全体のなかでは少数派だ。

今後は都内でも空き家率が上昇し、日本の高齢化は進んでいく。高齢者にも住宅を貸す必要性が出てくるはずだが、現状は高齢者が賃貸住宅を借りるのは非常に難しい。

孤独死などによって事故物件と扱われ、「資産に傷がつく」ことを恐れるオーナーの心情が背景にある。オーナーの責任というよりは、自然死であっても死後長らく発見されなかったりすれば、事故物件(心理的な瑕疵ありの物件)になる可能性があるという、制度に依るものでもある。

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