63歳の親との「実家じまい」で得た意外な気づき コロナ禍で会えない中、近くに呼び寄せる手も

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大井さんによれば、“実家じまい”をすることで3つのメリットがあったという。1つ目は、実家の“負動産”化問題の解決だ。思い出の詰まった実家も、子どもが家を出て自立した後の夫婦2人暮らしには広すぎる。

『両親が元気なうちに”実家じまい”はじめました。』より

両親にとっては日常の掃除や経年劣化の修繕などが負担になっているケースも多い。住人が年をとるごとに家が荒れるというのはよくあることで、管理されていない家は価値も下落してしまう。

親が元気で家も荒れていない頃に手放せば、思わぬ高値がつくこともある。実際大井さんの大分県の実家は最寄駅から徒歩44分という郊外だったが、1150万円という値で売却できた。正直なところ大井さんは、築30年以上で駅からも遠い実家の売却価格は、せいぜい300万円程度と見積もっていたそうだ。

元気なうちに家を整理したほうがいい

ところが、両親がDIYが好きで家をきれいに保っていたのが、思わぬ高評価のポイントだったとのこと。売却するなら両親が元気で家がまだ整理されている状態のほうがよさそうだ。

2つ目は高齢者ドライバーの問題だ。警察庁の集計によれば、2018年の交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバーで、直近に認知機能検査を受検した人を調べたところ、49.2%にあたる204人が「認知症の恐れ」か「認知機能低下の恐れ」との判定を受けていたという。

『両親が元気なうちに”実家じまい”はじめました。』より

若いころの運転のうまい下手にかかわらず、高齢になると認知能力が低下して運転適正が下がってくる。しかし地方の郊外住まいでは日常生活に自家用車が必須。事故の恐れを感じながらも、高齢者は自分で運転せざるをえない。その点交通の便がよい都会であれば公共交通機関を使えるし、徒歩圏内で日常の用事を済ますことも可能だ。

大井さんの父は運送関係の自営業で、ドライバーとしてはプロともいえるが、だからこそ運転の危険も熟知している。高齢になったら運転せずとも暮らしていける生活を、本人が望んでいたという。

3つ目は遠距離介護問題の解決だ。親に介護が必要になったときの遠距離介護は介護する側の心身、金銭面の負担が大きい。とはいえ介護が必要な年になってから親に移住してもらうのは、介護される側の負担が大きいものだ。

『両親が元気なうちに”実家じまい”はじめました。』より

介護の心配のない、まだ親が元気なうちに、身近に呼び寄せれば、要介護状態になってからもお互いに大きく生活を変えずに済む。また介護以前に健康状態のチェックをまめに促すことで、要介護状態になることを遅らせられるケースもある。

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