女性蔑視発言、「橋本新会長で決着」の光と影 セクハラ疑惑より深刻な橋本新会長のある悩み

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そうしたことも踏まえ、橋本氏はいったんは自民党を離党しない考えを示した。しかし、野党側が反発。小池都知事も19日の会見で「(離党など)分かりやすい形がインターナショナル(国際的)」と発言したことで、橋本氏も同日に自民党執行部に離党届を提出した。

橋本氏の会長就任について安倍前首相は18日、「火中の栗を拾っていただくことになったが、バッハ会長をはじめIOCとの信頼もある」と、その手腕への期待を示した。だが、野党は、橋本氏が議員と会長を兼務した場合、「政治的中立性の観点から疑問がある」(立憲民主幹部)と指摘している。

橋本氏の現職議員兼任を問題視も

そうした中、橋本氏と太いパイプを持つIOCのバッハ会長は「(橋本氏の会長就任は)最適な人選だ。IOCとオリンピックの改革のテーマの1つであるジェンダーの平等に重要なシグナルを送るものだ」などと高く評価する声明を出した。

IOCのマリソル・カサード委員も「政治家であり、五輪選手でもあるという、ほかに代わりはいない人」と歓迎してみせた。しかし、「IOCは各国組織委への政治的関与には極めて敏感」(関係者)とされ、今後のIOC内部の協議で、橋本氏が現職政治家であることについて疑問の声が出る可能性がある。

菅首相は18日、橋本氏の会長就任について、「国民の皆さんや世界から歓迎される安全安心の大会に向けて全力を尽くしていただきたい」と五輪成功へ強い期待を表明。丸川氏起用に関しても、「女性として若い発想で安全安心の大会をぜひ実現してほしい」と語った。

国内では橋本氏に期待する声が多く、森氏の院政や会長としての指導力などへの不安・疑問の声は少ない。テレビ各局の街頭インタビューでも、「女性で若い」ことを評価、歓迎する声が相次いだ。

ただ、女性蔑視発言をした森氏に絡め、国際社会での日本のジェンダー意識への批判や疑問はなお根強い。ジェンダーギャップ指数で153カ国中121位と、G7最下位に甘んじるのが日本の実態だ。

コロナ禍の収束がなお見通せない中、五輪開催への国民の機運を高められなければ、「最悪の場合、敗戦処理を強いられるのが会長職」(自民長老)。悲願である東京五輪開催と日本の汚名返上という「国家的重荷」を背負わされた橋本氏の前途は、「文字通りいばらの道」(有力閣僚)になりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事