政治に振り回される日本医師会の前途多難
日本医師会(日医)の会長選挙が4月1日に行われ、原中勝征・茨城県医師会長が当選した。原中氏は昨年8月の衆院選で民主党大勝へと導いた功労者。茨城県医師会は小選挙区で民主党候補を支援し、全員を当選させた。これまで自民党を支持してきた日医だが、政権交代が会長選挙の行方も大きく変えた。
とはいえ就任当初から難問山積だ。選挙で原中氏は131票を集めたが、政党との関係は是々非々とする京都府医師会長の森洋一氏が118票、現会長の唐澤祥人氏が107票と薄氷の勝利。今後、内部で路線対立が持ち上がる可能性も否定できない。
その第一の関門が、4月20日に開かれる日本医師連盟(日医連)の執行委員会だろう。日医連委員長を兼務する原中氏は、この場で民主党支持の方針を提起する可能性が高い。その際、7月の参院選で比例代表候補として推薦を機関決定している西島英利参議院議員(自民党)の推薦取り下げが焦点になる。日医幹部として中央社会保険医療協議会(中医協)委員を務めた西島氏については、40都道府県の医師連盟も推薦を決議している。県医師連盟の間では「今さら方針を変えるのはおかしい」との意見も根強い。
日医内での基盤の弱さも懸念材料だ。同日の副会長選挙では、原中氏が推薦した候補者が3人とも落選。日医執行部(多くは日医連と重複)には、会長選で戦った候補者に連なる面々が顔をそろえる。
そして民主党との関係も波乱含み。政府は行政刷新会議に規制・制度改革に関する分科会を設置し、混合診療の原則解禁を検討している。全額自費の高度医療などを保険適用の医療行為と組み合わせる混合診療は、高度医療を利用しやすくするとされるが、財政難で高度医療が保険対象とされず放置される危険性もある。日医は小泉政権時代に混合診療全面拡大の動きを大規模な署名活動を展開して阻止。しかし2005年の郵政選挙後、診療報酬1兆円削減という“仕返し”を受けた。
原中氏は民主党とのパイプの太さを誇るが、混合診療に強く反対すれば民主党と対決する場面も出てくる。一方、混合診療封じのため小沢一郎幹事長に助けを求めれば、参院選を前に借りを作らざるをえなくなる。政治に振り回される構図が続くことに変わりなさそうだ。
(岡田広行 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年4月10日号)
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