保育士の「地域ごとの年収」開示が今必要な理由

「保育の質」に関わる超重要な問題だ

地域区分の人件費額と実際に支払われる金額を比較しなければ、事業者が適正に賃金を支払っているか曖昧になる。それを明確にするため、内閣府は2021年度からの通知に地域区分ごとの人件費額を掲載する前提で今、準備を進めており、筆者は2020年度の地域区分ごとの人件費の内部資料を入手した(表)。関係者によれば、「2021年度の金額も大きく変わらない」という。

(出所:内閣府の資料を基に筆者作成)画像を拡大

この通知改定で期待されることは、保育士をはじめとした関係者が1人当たりの職員の人件費を具体的にイメージしやすくなること。もし現場の保育士や保護者が職員の待遇に疑問をもった場合に、園や事業者に説明を求めやすくなる。委託費の大部分は税金であることから、事業者側への情報開示や説明責任が一層促され、より透明性のある経営に改善されていくことが期待される。

地域区分別の人件費額が公表されることへの効果

ただ注意点として、公定価格を上回る賃金を払っている事業者が、賃金を切り下げる理由にしてはいけない。また、公定価格の金額はあくまで保育士の最低配置基準の人員体制に基づいている。

現場に余裕を持たせるために配置基準以上の人数の保育士を雇っている場合でも人件費総額は変わらないため、1人当たりの賃金が公定価格の金額より低くなってしまう。実際の人員配置や職員の年齢、各事業者の給与テーブルがどうなっているかも併せて見ることが必要だ。

とはいえ、地域区分別の人件費額が公表されることの効果は大きい。この通知を基準として、機械的にではあるが、本来はどの程度の賃金を各保育士が得ることが可能か計算できるからだ。公定価格の金額に処遇改善加算や自治体独自の処遇改善費を上乗せしていくと、単純計算という前提だとしても、得られるはずの賃金総額が見えてくる。

2020年度の全国平均では、おおよそ経験7年以上の保育士の年間賃金は最大で約465万円の計算となる。「公然と消える『保育士給与』ありえないカラクリ」(2020年6月17日)の記事を参照。

今回判明した、公定価格の人件費が最も高い東京23区で同様の計算してみよう。2020年度の公定価格の約443万円に、全職員対象の国の処遇改善加算Ⅰが月1万8000円つき、東京都独自の処遇改善費「東京都保育士等キャリアアップ補助金」(月額で平均4万4000円)もついた場合で足し上げると年間賃金は約517万円になる。

そこに、国のキャリアに応じた処遇改善加算Ⅱが月5000円(おおよそ経験3年以上)あるいは月4万円(同7年以上)が支給された場合、それぞれ約523万円、同約565万円に上る。

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