保育士の「地域ごとの年収」開示が今必要な理由

「保育の質」に関わる超重要な問題だ

保育士の質向上のために処遇改善が急務だが、低賃金になっている現状を変える解決策はあるのだろうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)

なかなか解決のメドが立たない、待機児童問題。その解決のため急ピッチで保育園の整備が行われるなか、保育士確保や質の維持のためにも保育士の処遇改善が重要という認識が広がっている。

ところがその処遇を改善しようにも、その人件費の実態が極めて捉えづらい。国は毎年度、公費で認可保育園に出している人件費(法定福利費は含まない年額)を通知で示しているが全国平均のため、地域によって異なる保育士の“適正な”賃金水準の手がかりがつかめないのだ。

保育士の低賃金問題の解決に向けての第一歩となるか

地域により、公費でいくら人件費が出ているかのか。具体的に「見える化」することが必要不可欠だと、筆者は約2年前から問題提起してきた。そうした中で内閣府は、初の通知改定に乗り出し、2021年度分から8つに分けた地域区分の人件費額を示す予定という。内閣府と議論を重ねてきた参議院の片山大介議員が3月の国会で質疑し、国が答える見通しだ。

国を挙げての保育士の処遇改善が始まったのは2013年度。処遇改善加算Ⅰが新設され、それから2020年度までに、保育士1人当たり月額で約4万5000円もの賃金アップが進んだ。

さらに、保育士の経験値によって最大で1人当たり月4万円も上乗せされる処遇改善加算Ⅱも設けられたが、保育士の低賃金問題が解決したわけではない。

保育士の賃金を見るうえで重要なのが、いったいいくらの賃金額が公費で保育園に給付されているかだ。認可保育園には、税金と保護者が支払う保育料が原資となる運営費の「委託費」が給付されている。委託費は、8つの地域区分、保育園の定員規模、園児の年齢別の保育単価である「公定価格」で計算される。

公定価格の「基本分内訳」として、国は毎年度「私立保育所の運営に要する費用について」という通知により、所長(園長)、主任保育士、保育士、調理員等の人件費の額を示してきた。この人件費は賞与や地域手当等を含む年額で、法定福利費や処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱを含まない。

2020年度の保育士の年間賃金は全国平均で約394万円となる(2021年1月に約395万円から約394万円に改定)。ただし金額はあくまで全国平均で、地域区分で異なる人件費の内訳は公表されてこなかった。

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