ビジネスセンスと脳習慣の切っても切れない縁 不確実性が増す時代に最強の武器となる「感性」

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センスにかかわる脳は、「見る脳」「聞く脳」「感じる脳」「動く脳」の4つの脳番地が基本になると考えます。これらの脳番地をバランスよく動かし、緊密に情報をやり取りする中で、センスが鍛え上げられていくのです。

なかでも「視覚」というのは非常に大きな意味と力を持っています。情報をキャッチするセンスとして、「見るセンス」は中心的な役割を担うからです。

その鍛え方はこうです。電車の中や街中を歩いているとき、あるいは職場や取引先などで、私たちは毎日たくさんの人と面しています。ところが、意外に目に入っているようで、しっかりと見ていないことが多いのではないでしょうか?

打ち合わせで対面した相手の服装をちゃんと覚えているでしょうか? 顔の特徴や髪形がどんなふうだったか? 意外に正確に思い出せないことが多いと思います。ただ漠然と見るのではなく注意を払って見ることで、私たちの視覚系と理解系の脳番地が活発に働き連動するようになります。その際のポイントが「テーマを決める」ことです。

たとえば、「今日はセンスのいい格好をしている女性を3人探そう」とか、「高価な腕時計をしている人を3人探そう」「年収の高そうな人を3人探そう」というようなテーマを掲げるのです。そしてそれにふさわしいと思う人を探します。最初からテーマが決まっているので、見るポイントが絞られます。すると、それだけ集中力が高まります。

また、見た目から想像しますから、推理力や洞察力、すなわち「思考系脳番地」が鍛え上げられます。その意味で、電車の中の人や街行く人の顔や容姿を見て、職業や性格、生活環境を想像するというのも大変いい訓練になるでしょう。

何の予備知識もなく、服装や表情、態度や仕草などから、さまざまに想像を働かせる。注意して相手を見る。そして、理解系や思考系などを存分に働かせる。脳にとっては大変効果的なトレーニングになります。

今、ビジネスにセンスが必要

センスというと、美的感覚の重んじられる芸術家や前述した職人など、特別な能力が必要な人にだけ求められると思うかもしれません。しかし、決してそうではないはずです。たとえば、新規開拓の営業先を回ることを考えてみましょう。どんな地域のどんな人たちを回るのが最も有効か判断するのも、1つのセンスです。また、訪問した先の相手の態度や表情から、押すべきか退くべきかを判断するのも1つのセンスでしょう。

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相手がいま何を求めているか? それに対して自分がどう応えられるかを想像し、どんな言葉や物腰で相手に対するのが最適かを判断するのもセンスなら、契約やクロージングに持ち込むタイミングを計るのもセンス。膨大な情報の何に感応し、どう選択するか? その後、それに対応してどう行動するか? 達人と呼ばれる人たちの一連の流れのなかには、そのセンスが確固としてあるのです。

営業だろうと企画職だろうと、あるいは商品開発だろうと、同じ。つまりビジネスにおいてもあらゆる場面でセンスが問われていて、センスのある脳をいかに作り出すかが問われています。「見る」「聞く」「感じる」「動く」──まずは皆さんの仕事でとくに重要な部分のセンスから、脳トレで磨いてみてはいかがでしょうか。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。著書に、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『一生頭がよくなり続けるもっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)など多数。

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