ビジネスセンスと脳習慣の切っても切れない縁 不確実性が増す時代に最強の武器となる「感性」

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私はこれまでアメリカや国内の大学病院などで脳の研究に従事し、MRI画像の解析をもとに、脳の活動とその領域を分析することで、「脳番地」という概念を作り出すことに成功しました。脳番地とは同じような働きをする脳の集まりであり、その神経細胞群と関連している脳の機能の総称をいいます。

要は、見たり聞いたり、記憶したり想像したりするには、それぞれの脳の得意な領域、専門領域があるということです。各脳番地をトレーニングによって鍛えることで、その能力を高めることができます。

最近で言えば、ラジオを聞くことで脳の「聴覚系脳番地」が成長することが確認されました。大学生にラジオ番組を1日2時間聞いてもらい、それを1カ月続けたところ、著者が開発した「加藤式・MRI画像診断法」で、明らかに脳が成長した形跡が認められたのです。とくに右脳の記憶系の成長が著しかったのですが、これはいろんなことを想像しながら話を聞くからだと考えられます。

センスは職業によって後天的に鍛えられる

センスのある人、感覚と感性の鋭い人は、おそらく脳の対応した部分が発達した人だということができます。先天的なものもあるでしょうが、これまでの私の実験やデータ、経験から考えると、後天的な環境や訓練によってよく使う脳番地があり、そこが発達しているケースが多く見受けられます。

脳は使えば使うほど、神経細胞が触手を伸ばしてネットワークを作り、それが太く大きくなるので、鍛えれば鍛えるほど発達します。そうなると、職業によって鍛えられるという部分が大きい。印象的だったのは、立て板に水でしゃべりまくるアナウンサーの古舘伊知郎さんの脳を見たときです。

古舘さんはスポーツ系の実況で定評がありました。ですから、視覚系脳番地が発達していると思いきや、聴覚系脳番地が大変発達していたのです。しかも左脳ではなく、右脳が極端に発達していました。古舘さんの誰もまねできない流れるような実況は、左脳の論理的な思考では追いつかず、右脳のイメージ的な瞬間のひらめきが関係しているのです。だからこそ誰もまねができない。

古舘さんのような極端なケースだけでなく一般の人でも、接客業や営業職ならば視覚系、聴覚系や伝達系が発達していますし、教師やコンサルタントなど人前で話をする職業では、言語系や思考系が発達している傾向があります。いずれにしてもポイントは、脳は筋肉と同様に、鍛えるほどに成長し強化されていくということです。先天的にすべてが決まっているというものでは、決してありません。

世の中には、さまざまな脳トレのメニューやカリキュラムがありますが、センスという非常に人間的で高度な脳の働きも、意図的に鍛え上げる方法はあります。ここでは、具体的なやり方の1つをお伝えしましょう。

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