ヒョンビン君のケースは、保護者の世話が十分に行き届いていないほかの子どもたちにも通じる。蘆原区のある賃貸マンションに住むユニさん(11、仮名)の家族は母方の祖母と母親、中学3年生の兄と4人家族。2020年に家を出た父親とは連絡がなく、母親が1人で生計をやりくりしている。子どもの世話は祖母の役目だ。
近所の食料品市場で働くイ・サンオさん(57)は、「ユニさんが1人で給食カードを使って支払う様子が目に入るが、いつもアイスクリームだけをたくさん買っている。あの年頃でアイスクリームをご飯代わりにするのはやめないとだめなんだけど……」とため息をつく。
ソウル市が支給する給食カードがよく使われる店舗の1つ、同市北部の江北(カンブク)区にあるフランチャイズチェーンの製菓店店主も、イさんと似たような話をする。「給食カードで決済する子どもたちがたくさん買うのは冷凍スパゲッティとソーセージパン。1日の限度額に合わせて買っていくが、おやつが主食代わりのようだ」。
おやつを主食として食べる子どもたち
低所得層の子どもたちにとって、コロナ禍は栄養摂取の格差と小児肥満の増加につながっている。「ソウル新聞」が情報公開請求して得た2019年から20年の給食カード現況資料を分析した結果、2020年の利用件数は379万4820件で、前年2019年の71万8612件と比べ約5倍増えている。
利用内訳も偏っている。利用件数全体でファストフード店の割合が2019年の0.6%から2020年は1%と2倍近く増えている。2020年にソウル市で給食カードが最も利用された加盟店10カ所のうち8カ所がコンビニだ。栄養バランスが整っている健康的な食事よりは、安くて量が多いインスタント食品の割合がはるかに高い。
また、午後9~11時の時間帯で決済される件数が2020年に11%と、前年比で2%増えている。学校に行かない日が長期化し、夜の時間帯に活動する子どもが増えている結果だ。
韓国・梨花女子大学社会福祉学科のチョン・イクチュン教授は、「低所得層の子どもたちの場合、コロナ禍以前には学校給食が栄養摂取の格差をある程度緩和させていた。コロナ禍が長期化し、家庭事情によって発育の問題など多様な格差現象が生じている」と指摘する。