「記者のおじさん、ご飯をおごってくれませんか。お腹がとても空いているんです」
受話器から聞こえる懐かしい声には、いきなり電話を掛けてきた気恥ずかしさも伝わってきた。「ぼくです、ヒョンビン(11、仮名)です。以前、コンビニで会った……」。ひとまず弁当を購入できる電子ギフトクーポンを携帯電話から送った。彼がご飯を食べたころを見計らって連絡し、ヒョンビン君に事情を聞くと「給食カードの限度額を使い切ってしまったのに、家に食べ物がなくて……」と返ってきた。
食事支援金を使い切る子どもたち
ヒョンビン君と会ったのは2021年1月27日午後5時40分。ソウル市内北東部・蘆原(ノウォン)区のあるコンビニでだった。小学校5年生の彼は、自分の手にあるハンバーガーが夕食だと言った。夕食をコンビニで解決するようになって1年経つという。
父親は働き口を求めて地方におり、身体の具合が悪い母親はそれでも働いて家にいない。子ども自ら、食事を解決する理由だ。彼は「お父さんは家に時々帰ってくる。具合が悪くて家にいたお母さんも、昨年(2020年)2月から働いて、帰ってくるのは夜遅い」と話す。
ヒョンビン君はソウル市が提供する児童向け給食カードを使っている。支援金額は1日1食当たり6000ウォン(約573円)。1日で最高1万2000ウォン(約1147円)まで使える。支援対象となる児童の状況で違ってくるが、彼の場合は週末には支援されず、ひと月当たり13万2000ウォン(約1万2622円)が限度だ。給食カードで昼食・夕食をまかなうヒョンビン君のような子どもたちは、すぐに限度額をオーバーしてしまう。
コロナ禍で通学ができず、ヒョンビン君は深夜までYouTubeを見たりスマートフォンでゲームをし、起きるのはお昼前。同級生と比べて小さな体格だった彼は、コンビニで買うインスタント食品中心の食事で、この1年間で体重が24キログラムから34キログラムに太った。