「施設か路上」の2択迫られた42歳男性の絶望

生活保護申請後の宿泊場所探しは「自己責任」?

「年末にはまた施設入居か、路上生活かの選択を迫られるのでしょうか」と落ち込むタツヤさん。今も不安定なホテル生活が続く(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

11月のある朝、タツヤさん(仮名、42歳)は待ち合わせをした区役所前にすでに到着していた。この日の目的は生活保護の申請をすること。私が「早いですね」と声をかけると、「始発で来たんです。(最寄りの)駅には5時半には着いていました」とはにかんだような笑顔を見せた。

空気はもう冷たい季節。そんな早朝にどうして? タツヤさんは薄手のジャンバーの襟元を掻き合わせながらこう言った。

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「3年前にくも膜下出血の手術をしてから、電車に乗ると気持ちが悪くなることがあるんです。ひどいときは何時間も動けなくなります。始発で行けば、万が一にも約束の時間に遅れることはないと思って」

このときタツヤさんは、東京都が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う救済事業の一環として、住まいを失った人などに対して提供している新宿のビジネスホテルで一時的に暮らしていた。生活保護を申請する区役所までは電車で約30分。朝一で出発すれば、最悪歩いてでもたどり着けると思ったのだという。

真面目な人なのだなと感じた。

「全財産」はビニールバッグ2つ

数日後、今度は取材で話を聞くために再びタツヤさんと会った。タツヤさんは“全財産”である大きなビニール製バッグを2つ提げて現れた。事情を尋ねると、生活保護の申請中であることを理由に、都のホテルを追い出されたのだという。

「区の担当者からは、引き続き都のホテルを利用できないか確認してくださいと言われていました。なので、てっきりそのまま泊まれると思っていたのに、都の担当者からは、泊まる場所は『区のほうで用意できないんですか?』と言われてしまって……。荷物もできるだけ早く出してくれと言われ……」

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