韓国の子どもの成長をむしばみ始めたコロナ禍 親の収入減で子どもの世話に手が回らず健康に影響

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ソウル市東大門(トンデムン)区に住む小学校1年生のトンウ君(8、仮名)。気温がマイナス18.6度にまで下がった2月8日、半地下にある12坪の家で電気ストーブと綿入れ布団1枚で寒さに耐えていた。3カ月以上ガス料金を滞納してガスを止められ、2カ月もガス暖房が入れられなかった空間はとても寒い。トンウ君の母親であるキム・ジュヨンさん(46、仮名)は、「電気が止められなくてよかった。なんとか寒さに耐えられた」と打ち明ける。

トンウ君の事情を知った地域児童センターのセンター長が、延滞していたガス料金を支払ってくれた。キムさん一家は末っ子のトンウ君と中学2年生、同3年生の3人の子どもがおり、母親が1人で育てている。2020年末までは食堂などで働いて生計を立てていたが、コロナ禍で収入が急減した。

コロナによる休校措置がもたらした家庭環境の変化

3人の子どもが学校に行けないという現実は、キムさんには「教育の空白」以上の衝撃として押し寄せた。学校に通うようになったばかりのトンウ君には、コロナ禍の状況に適応するどころか、学校になじめずにいる。塾などの私教育はおろか、同級生との関係も断絶した子どもたちは元気を失っている。

4人家族は、食費や水道・光熱費を支払えなくなった。2カ月分の食事となる2キログラムのコメは、ひと月でなくなった。キムさんは勤労活動を前提とする、条件付きの基礎生活受給者(生活保護)だ。住居費など135万ウォン(約12万9000円)と3人分の給食カード54万ウォン(約5万1600円)が毎月支援されている。しかし、生活費に離婚した夫が残した借金を加えると、家計はとても苦しい。

2020年、トンウ君の登校日は50日にもならなかった。運動もせず、インスタント食品で食事をまかなう彼の体重は1年で10キログラム増えた。キムさんは「手元にある家の保証金500万ウォン(47万8100円)まですべて使ってしまい、悪い考えにもとらわれた」と声を詰まらせる。ふと、横に座っていたトンウ君を見ると、大粒の涙がほほを伝わっていた。

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