「テレビ画面争奪戦」に負けた放送局のしくじり コロナ禍の配信サービス定着が放送にダメ押し
民放キー局の2020年度第3四半期決算が出そろった。各局の業績の中でも、放送事業そのものの収入を取り出して見てみよう。各局のタイム(番組提供CMの収入)とスポット(番組と番組の間に流れるCM)それぞれの数値を表にした。
(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
第2四半期ではとくにスポットが前年比3割ダウンにまで落ち込んでいたのを2割弱の減少に挽回はしている。これはこの四半期、なかでも12月に前年増に転じたからで、この時期コロナ禍が落ち着き、国内経済が活性化したこととリンクしている。ということは、2021年1月の緊急事態宣言発令の後、第4四半期は期待できないだろう。
テレビ局は視聴率が上がったのに収益は下がった
この影響は制作費に如実に表れていて、なかには2割以上下げた局もある。すでに報じられているとおり、この3月を機に各局で長年続いた番組が改編されたり、ベテランのタレントがMCを交替するのも予算縮小が一因だろう。
一方で視聴率を見ると業績に反して好調だ。日本テレビの決算報告書には各局の個人視聴率(世帯視聴率ではない点に注意)が表で示されているが、全日、プライム、ゴールデンなど各時間帯に「+」が並んでいる。PUT(テレビ放送全体の個人視聴率)で見ると、どの時間帯も1%以上視聴率が上がっているのだ。
テレビ局の指標は視聴率であり、収益を左右する。基本的にはそうだったはずが、そうとも言えなくなってきた。もちろんコロナ禍によるものだが、実は長期的な傾向はその前から続いていた。視聴率と関係なく放送事業は限界に至っていた。コロナ禍がその潮流を決定づけたと言える。
コロナ禍がテレビ放送にダメ押ししたことはもう1つある。配信サービスの定着だ。
動画配信サービスは、無料のYouTubeが若者に普及していたが、有料サービスもAmazonプライムとNetflixの二大外資を中心に伸びていた。これらの動画サービスは、スマホでの視聴のみならずテレビ受像機での視聴も活性化していた。これを決定づけたのがコロナ禍による巣ごもり期だった。
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