社員のクチコミと企業業績・株価との深い関係 「体質」「古い」「年功序列」は業績悪化のサイン?
本研究では、数あるクチコミカテゴリの中から、「組織体制・企業文化」カテゴリに投稿された上場企業のクチコミデータをテキストマイニング・AIによって、「組織文化スコア」を作成している。
文章からどのようにスコアに変換するのか? とお思いの方もいらっしゃるだろう。どのようにクチコミ文章から組織文化スコアを生成するか簡単に説明したい。
AIに学習させるためのデータとしてまずは学習データをつくる。投稿者ごとのクチコミを、句点「。」で分割し、文章単位の情報に変換する。その文章情報がポジティブ・ネガティブ・判定不能かを複数人で読み込みフラグを付与する。AIといっても、実は大変地道な作業があるのだ。
これを学習データとしてAIに勉強させることで、数十万件にも及ぶクチコミデータをスピーディーに自動で分析し、会社単位でどのくらいポジティブなクチコミが投稿されているかを定量化することができる。これが「組織文化スコア」となるのである。
東証1部、2部に上場する会社群(金融法人、および、各月末において投稿者数が15件未満の会社は対象外)に限定し、社員クチコミ文章から生成された「組織文化スコア」と「財務データ」・「株価・時価総額データ」(東洋経済新報社の有価証券報告書データおよび月次修正株価・時価総額データを活用)を用いて、それらとの関係を分析した。
前置きが長くなったが、研究結果について共有していこう。
組織文化の悪化は成長鈍化と財務リスクの引き金に
まずは組織文化スコアと財務指標についての研究結果だ。組織文化スコアとの関係性を分析した財務指標は、「ROE(自己資本利益率)」「売上高純利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」「ROA」「売上変化率」「負債比率」である。
それぞれの財務指標と、下記の表にあらわす9分位ポートフォリオに分けられた企業群との相関関係を調べた。まず算出した組織文化スコアをベースに対象企業の前年の組織状態を「悪い」「中間」「良い」の3段階に分類し、さらに翌年の組織文化スコアの改善度合いで「悪化」「維持」「改善」3段階に分類、計3段階✕3段階の9種類に企業を分類したうえで、それぞれの財務指標との関連性を調査した。
特に関係が強く見られた「売上変化率」「負債比率」について読者の皆様に共有をしたい。
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